大学の難易度が高いほど協定先は多い?228大学の大学間交流協定データを分析

国内大学の入試難易度と大学間交流協定先の関係を表す図

【大学間交換留学の教科書編集部】

交換留学を考える大学生のための、大学や留学エージェントから独立した情報サイトです。
全国の旧帝大で交換留学や海外大学院留学を経験したメンバーが、自分たちの経験と公式情報をもとに運営しています。

入試難易度が高い大学ほど、協定先は多く、上位Tierの割合も高い傾向があります。
ただし関係は中程度で、同じ難易度でも協定先の数が数倍違う大学があります。

当サイトの交換留学先データベースと河合塾Kei-Netの入試難易度を大学ごとにつなぎ、国内228大学を分析した結果は次のとおりです。
・難易度と協定先機関数の相関:ρ=0.54
・難易度とA+以上のTier比率の相関:ρ=0.51
・設置区分などをそろえても、難易度5ポイント差は協定先機関数の約30%差と関連

偏差値だけで「留学先も充実しているはず」と決めず、志望校ごとに実際の候補を見てください。

1. 使ったデータと数え方の注意

留学先のデータは文部科学省「大学における教育内容等の改革状況について」の令和5年度大学間交流協定データです。
当サイトで大学名の改称や表記揺れ、海外機関名の重複を整理したデータベースは、原票51,170行、国内690大学を収録しています。
分析に使った版の改訂日は2026年6月19日、内容の最終確認日は2026年9月14日です。

入試難易度は、河合塾Kei-Netが2026年9月7日に更新した「2027年度入試難易予想ランキング表」の学部学科ランクを使いました。
大学ごとに、確認できた入試区分の中央値をその大学の代表値にしています。
平均値にしなかったのは、学部構成の違いに結果が引っ張られにくくするためです。

対象は入試難易度を5区分以上確認でき、重複を除く留学先が20機関以上、Tier判定対象が10機関以上ある大学です。
最終的に国公立84大学、私立144大学の計228大学になりました。

用語は次の2つを押さえれば読めます。
・協定先機関数:同じ海外機関との複数の協定を1つにまとめた、重複を除いた数。協定の行数で数えた経路数でも相関は同じ0.54で、結論は変わりませんでした
・A+以上:当サイト独自のTierのうち、SSS・SS・S・A+をまとめたもの

Tierは世界大学ランキング、教育・研究上の位置づけ、機関種別などを組み合わせた比較指標です。
交換留学の合格難易度や、教育の優劣を直接表すものではありません。
読み方は交換留学先大学ティアリスト2026の使い方で説明しています。

注意点が1つあります。
文部科学省のデータは協定があることを示すもので、今募集している枠の数ではありません。研究交流だけの協定、特定の学部だけが対象の協定、休止中の協定も含まれている可能性があります。
そのため、この記事の協定先機関数は、今応募できる交換留学先や派遣枠の数とは一致しません。

2. 入試難易度と協定先機関数の関係

国内228大学の入試難易度と重複を除いた協定先機関数の散布図
図1:入試難易度と重複を除いた協定先機関数。縦軸は差を読みやすくするため対数目盛。

難易度が高い大学ほど、協定先は多い傾向があります。
図1では、右上ほど「入試難易度が高く、協定先が多い」大学です。
全体は右上がりですが、同じ難易度でも縦方向の散らばりが大きく、点は一本の線には並びません。

スピアマン順位相関はρ=0.54、ブートストラップ法による95%信頼区間は0.42〜0.63でした。
関係ははっきりありますが、難易度だけで協定先機関数を言い当てられるほど強くはありません。

協定先機関数の上位は早稲田大学921機関、大阪大学727機関、広島大学674機関、東北大学669機関、北海道大学663機関でした。
一方で関西外国語大学のように、入試難易度の代表値だけでは説明できない広いネットワークを持つ大学もあります。
主要11大学を候補数・Tier・派遣記録で比べた結果は、交換留学に強い大学はどこ?にまとめています。

3. 難易度帯別の協定先機関数

入試難易度帯別の協定先機関数の中央値と四分位範囲
図2:難易度帯別の重複を除いた協定先機関数。棒は中央値、細線は中央50%の範囲。

難易度帯ごとの集計は次のとおりです(大学数/協定先機関数の中央値/中央50%の範囲/A+以上の平均)。
・47.4以下:117大学/43機関/34〜82機関/5.9%
・47.5〜52.4:52大学/58.5機関/34.8〜112.8機関/8.1%
・52.5〜57.4:28大学/105機関/65.5〜216.5機関/10.8%
・57.5〜62.4:22大学/224機関/96.8〜329.8機関/13.5%
・62.5以上:9大学/531機関/377〜663機関/26.5%

帯が1つ上がるごとに、協定先機関数の中央値が増えています。
ただし62.5以上は9大学しかなく、サンプルが小さい点には注意してください。

同じ帯の中の幅も広がっています。
たとえば57.5〜62.4では約97〜330機関で、同じくらいの難易度でも3倍以上の差があります。
難易度帯は大まかな傾向をつかむには使えますが、志望校の候補数の代わりにはなりません。

4. 難易度と上位Tier比率の関係

国内大学の入試難易度とA+以上の協定先比率の散布図
図3:入試難易度と、協定先に占めるA+以上のTier比率。

入試難易度とA+以上比率の相関はρ=0.51、95%信頼区間は0.39〜0.62でした。
難易度が高い大学ほど、協定先の数だけでなく上位Tierの大学が含まれる割合も高い傾向があります。

A+以上比率が高かったのは、一橋大学40.2%、慶應義塾大学38.4%、東京科学大学33.9%、東京大学32.3%、名古屋大学28.4%などです。
これは「その大学から交換留学しやすい割合」ではなくTier判定対象の協定先に占める構成比です。

入試難易度帯別の協定先Tier構成比
図4:難易度帯別のTier構成。構成比は各大学の比率を帯ごとに平均。

Tierを細かく見ると、難易度帯が上がるにつれてS以上とA以上の比率も上がります。
A以上の平均は47.4以下の帯で9.0%、62.5以上で34.0%、S以上は同じ順に3.6%、18.6%でした。

比率だけを見ると、協定先の母数が小さい大学が有利に出てしまうことがあります。
実際の選択肢を比べるときは、A+以上の割合と一緒に、A+以上の絶対数も見てください。
個人的には、高校生のうちは割合より「行ける上位校が何校あるか」の数のほうが、ずっと比べやすいと思います。

5. 設置区分・入試区分数をそろえた分析

難易度が高い大学は、単に学部・学科が多いだけかもしれません。
そこで、国公立か私立かと、難易度が載っている入試区分数を同時に入れた回帰モデルでも確かめました。
条件をそろえても、関係は残りました。結果は次の3つです。

  • 入試難易度が5ポイント高いことは、協定先機関数が約30%多いことと関連
  • A+以上比率は、難易度5ポイントにつき約3.4ポイント高いことと関連
  • 決定係数は、協定先機関数モデルがR²=0.44、A+以上比率モデルがR²=0.40

「難易度を5ポイント上げれば協定先が30%増える」と読んでしまいがちですが、因果の話ではありません。
観察データの上で、ほかの条件をそろえてもその程度の関連が残った、という意味です。

入試区分数は学生数や学部構成そのものではないので、「大学規模を考慮しても関係がある」とまでは言えません。
モデルで説明できるのは全体の4割ほどです。残りには、大学ごとの国際戦略、学問分野、協定の歴史などが入っていると見ています。

国公立と私立を分けても、傾向は残りました。
難易度と協定先機関数の相関は国公立0.45、私立0.45、A+以上比率との相関は国公立0.66、私立0.51です。
「難易度の高い大学に国公立が多いから」というだけで、全体の関係が説明できるわけではありません。

6. 予測より協定先が多い大学

難易度・入試区分・設置区分を調整したモデル予測と実際の協定先機関数の差
図5:難易度・設置区分・入試区分数から予測した協定先機関数と、実際の数との差。右ほど予測より多い。

同じ難易度でも、協定先が多い大学があります。モデルの予測より実際の協定先が多かったのは、関西外国語大学、城西国際大学、創価大学、山梨学院大学、名古屋商科大学、広島大学などです。
語学・国際教育を特色にする大学や、海外展開に長く投資してきた大学が目立ちます。

反対側にいる大学を、そのまま「国際性が低い」と見ることはできません。
今回のモデルは学部構成や学生数を細かくとらえておらず、教員養成系や小規模な大学では、必要な協定の形も違います。
1つの強いプログラムに集中している大学も、協定先の総数では不利に出がちです。

個人的には、大学選びにいちばん使えるのはこの図5だと思っています。
難易度の割に協定先が多い大学は、交換留学を本気で考える人にとって十分に有力な候補です。

7. 難易度と協定先が結びつく理由の仮説

ここからはデータで証明したことではなく結果を説明できそうな仮説です。
考えられる経路は次の5つです。

  1. 大学の規模と分野の広さ:学部が多い総合大学ほど、学部・研究科単位の海外とのつながりも増えやすい
  2. 研究のつながり:共同研究や教員交流から、学生交換に発展する協定がある
  3. 国際担当の組織:協定の交渉、危機管理、単位互換、学生支援には、継続して人が必要になる
  4. 大学の知名度と相互の需要:海外の大学から交換先として選ばれやすいと、対等な学生交換を組みやすい
  5. 学生側の需要:留学したい学生が多い大学では、地域や分野の違う選択肢を保つ理由がある

5つは別々に働くわけではありません。
難易度の高い大学に資源や希望者が集まってネットワークが広がる一方で、国際教育を大学の中心に置き、難易度から予想される以上のネットワークを作っている大学もあります。

8. 大学選びへの使い方

入試難易度は「大学の格付け」ではなく候補を絞ったあとに留学の環境を確かめる補助線として使ってください。
順番は次の5つです。

  1. 学びたい分野を先に決める
    出発点は協定先の多さより、国内の大学で学びたい専攻があることです。
  2. 行きたい国・言語を決める
    総数が多くても、希望する地域の候補が少なければ、自分にとっての選択肢は広くありません。
  3. 2〜3大学を同じ条件で検索する
    留学先データベースで、国・地域、Tier、機関名をそろえて比べます。
  4. 割合と絶対数をセットで見る
    A+以上の割合だけでなく、当てはまる大学が実際に何校あるかも数えてみてください。
  5. 最新の募集要項まで読む
    応募できる学部、GPA、語学要件、派遣人数、費用、募集があるかを公式情報で確かめます。

逆に、この分析ではわからないことは次の6つです。
・実際の派遣枠と学内選考の倍率
・自分の学部・学科から応募できるか
・希望分野の授業が、英語など履修できる言語で開かれているか
・学費以外の生活費、航空券、保険、奨学金
・学期のずれや単位互換で、卒業時期がどう変わるか
・協定が今も募集対象として運用されているか

協定先の数は「入口の広さ」、Tierは「候補の一側面」です。
協定先が多い大学でも、学内選考に通りやすいとは限りません。大学ごとの倍率は交換留学の倍率は何倍?で公表データを見てみてください。

個人的には、難易度が少し下でも、行きたい国の協定先が多い大学を選ぶのは十分ありだと思っています。
その考え方は交換留学したいなら、東大が最適とは限らないに、高校生のうちにやることは高校生からの交換留学ロードマップに書いています。
志望校の協定先から行きたい大学を書き出すときは、交換留学の協定校リストの作り方も参考にしてみてください。

まとめ

  • 入試難易度と協定先機関数の相関は0.54、A+以上比率との相関は0.51で、どちらも中程度の正の関係
  • 国公私立と入試区分数をそろえても、難易度5ポイント差は協定先機関数の約30%差と関連する
  • 同じ難易度帯でも差は大きいので、最後は候補数・Tier・応募条件・派遣枠を分けて確かめる

今日やることは志望校を2〜3校決めて、留学先データベースで行きたい国の協定先を同じ条件で数えてみることです。


参考にしたサイト: 河合塾Kei-Net「入試難易予想ランキング表」 / 文部科学省「大学における教育内容等の改革状況について」 / Research Organization Registry(ROR)

出典は2026年9月20日に最終確認しています。協定先機関数は協定があることを数えたもので、現在の募集枠ではありません。募集の有無や応募条件は、各大学の最新の募集要項で確認してください。