【大学間交換留学の教科書編集部】
交換留学を考える大学生のための、大学や留学エージェントから独立した情報サイトです。
全国の旧帝大で交換留学や海外大学院留学を経験したメンバーが、自分たちの経験と公式情報をもとに運営しています。
子どもに世界への興味を持ってほしいと思っても、家庭で何から始めればいいのか迷いますよね。
私は、英会話や海外旅行より先に、身近なものの出どころを一緒に調べ、比べ、人に聞いてみる時間を家庭で増やすのがおすすめだと考えています。
学年が上がるにつれて、何を調べるか、だれと話すかを本人に渡していき、高校では進路を本人に返します。
学年ごとにやることはだいたい次のとおりです。
・小学1〜2年:地図、絵本、食べ物で、世界を毎日の暮らしに置く
・小学3〜4年:違いを見つけたら、理由を1つに決めつけずに考える
・小学5〜6年:自分で選んだ問いを2つの資料で調べ、家族に説明する
・中学生:英語を、知りたいことを調べたり人と話したりする道具として使う
・高校生:海外に行かない道も含めて、進路と費用を本人と一緒に比べる
私自身、大学で交換留学の準備を進めるなかで、英語の点数だけでなく、どの地域で何を学びたいかを言葉にし、資料を比べ、費用や安全について家族と話す力が必要になりました。
この記事は留学の直前には急に身につけにくいこれらの力から逆算しています。
1. 英語の点数と世界への関心の違い
英語の点数と、世界への関心は別ものです。
英語のテストで高い点を取れても、知らない価値観を避ける子はいます。反対に、英語はまだ話せなくても「どうしてこの国ではこうするんだろう」と問い続けられる子もいます。
OECDはグローバル・コンピテンスを、世界や異文化に関わる問題を考え、異なる見方を理解し、敬意をもって人と関わり、行動する力として捉えています。
UNESCOのグローバル・シティズンシップ教育も、知識だけでなく人とのつながりや実際に関わって行動する学びを組み合わせ、年齢に応じて段階を分けています。
家庭でできるのは、次の5つの経験を、日を分けて少しずつつなげることです。
・出会う:食べ物、本、音楽、地図、人を通して、知らないものが身近にあると知る
・気づく:「同じところと違うところは?」と聞き、違いを優劣ではなく観察の入口にする
・比べる:2つ以上の資料や人の話を確かめ、1つの説明がすべてではないと知る
・聞く・伝える:実際の相手に質問し、自分の考えも伝える
・自分で選ぶ:次に調べるテーマや参加する活動を、本人が決める
毎回5つ全部をやらなくても大丈夫です。夕食の食材の原産国を地図で探す日があり、別の日に外国から来た人に質問する機会がある。そこから次の問いが出てくれば十分です。
親としては先のことまで考えたくなりますが、理想像を先に決めすぎないように気をつけたいところです。「将来は海外大学へ」と早く決めると、世界を知る活動が親の計画をこなす作業に変わってしまいます。
2. 小学1〜2年:日常の中の世界
現行の小学校学習指導要領では、標準的には3〜4年生で外国語活動、5〜6年生で教科としての外国語が始まります。
1〜2年生のうちに家庭でやるのは、世界と毎日の暮らしがつながっていると感じるきっかけづくりです。
やることは次の3つがあれば十分だと思います。
・地図や地球儀、世界が舞台の絵本を、手に取りやすい場所に置く
・バナナの産地、好きな選手の出身地、今日着ている服の生産国を一緒に探す
・質問されたらすぐ正解を言わず、「分からないから一緒に見よう」と返す
図書館で世界の昔話を1冊借りる、夕食に初めての料理を1品加える、天気予報で別の都市を見る。これだけでも十分な一歩です。
英語は歌、あいさつ、短い動画、絵本の音声を楽しむ程度で構いません。発音を何度も直したり覚えた単語の数を毎回確かめたりすると、「間違えないこと」が中心になってしまいます。
個人的には、英語の時間を増やすために日本語の読書や外遊びを削る必要はないと思っています。日本語で深く考えられることや、自分の住む地域をよく知っていることが、後でほかの文化と比べる材料になるからです。
3. 小学3〜4年:違いの理由の考え方
3〜4年生では外国語活動で「聞く」「話す」中心のやり取りが始まります。
家庭では英語の予習を増やすより、違いを見つけたあとに次のことを聞いてみてください。
・日本と同じところは何か
・違うところは何か
・そうなった理由は1つだけか、別の地域や家庭ではどうか
たとえば海外の給食の写真を見て、「日本より量が多い」で終わらせない。気候、宗教、値段、学校の仕組み、家で食べる昼ごはんとの関係など、理由はいくつも考えられます。
「○○人は明るい」「△△国は勉強熱心」といった説明は覚えやすい反面、個人差や地域差を消してしまいます。保護者も「その国はこうだよ」と言い切らず、「この人の場合はこうなんだね」と主語を小さくしてみてください。
地域の国際交流行事、学校のALTとの活動、図書館や自治体の企画など、実際の人と話せる場があれば使ってみてください。
子どもだけで知らない相手とネットでつながるのではなく、学校や自治体など運営者がはっきりした場を選び、個人情報や撮影の扱いは保護者が確認しておくと安心です。
4. 小学5〜6年:小さな調べ学習
5〜6年生では外国語に「読む」「書く」も加わります。
家庭では点数だけでなく興味を持ったテーマを自分で選び、2つの情報を比べて家族に説明する、小さな調べ学習を始めてみてください。
手順は次の5つです。
・問い:子どもが「なぜ?」を1つ選ぶ。大人はテーマを決めすぎない
・資料:本と公式サイトなど、性格の違う2つを使う。発信者と日付を一緒に確かめる
・比較:同じ点、違う点、まだ分からない点を分ける。早く1つの結論に誘導しない
・表現:紙1枚、写真、3分の説明にまとめる。英語や見た目より中身について質問する
・次:次に知りたいことを1つ残す。続けるか、別のテーマに移るかは本人に任せる
テーマは、カカオがチョコレートになるまで、好きなゲームが作られた国、同じスポーツの応援の仕方、世界の通学、着ている服の生産地など、本人の生活から選ぶと続きます。
「世界の貧困」のような大きな題を大人が与えるより、手元の疑問から始めたほうが、調べる範囲を絞れます。
発表のあとは「すごいね」で終わらせず、「どこで分かった?」「違う説明はあった?」「だれに聞いてみたい?」と返してみてください。
5. 中学生:道具としての英語
中学生になると、定期試験や受験のための英語が増えます。
勉強は必要ですが、英語が評価される科目だけになると、「何を知りたいか、だれと話したいか」が見えにくくなります。
好きなテーマを1つ持ち、日本語で深く調べながら、ときどき英語の資料や発信者にも触れる形が続けやすいです。
正直、点数があっても、使ったことのない英語はとっさには出てきません。
私もIELTSは7.5ありましたが、一番困ったのは、話そうとした瞬間に頭が真っ白になることでした。
だからこそ中学生のうちから、言いたいことを短い英語にして、実際の相手に通じるか試す経験を少しずつ入れておくと、後で楽になります。
翻訳AIは禁止しなくて大丈夫です。内容をつかむのに使い、固有名詞、数字、日付、出典は元のページで確かめる習慣をつけておくと安心です。
国際交流、オンライン交流、模擬国連、地域の活動、短期プログラムは、全部に参加しなくて構いません。
本人に1つ選んでもらい、目的、費用、かかる時間、安全面、参加しない場合の代わりの案を簡単にまとめてもらいます。
保護者は安全と家計の範囲を示し、その内側の選択を少しずつ任せてみましょう。
AI時代に海外で学ぶ意味については次の記事に書いています。
6. 高校生:進路の比べ方
高校生になったら、本人が何を学びたいかを聞き、どの方法なら目的と家計の両方に合うかを一緒に比べます。
私は、留学を親子の約束にせず、行かない選択も含めて本人に返すのがいいと考えています。
主な道と、先に確かめることは次の4つです。
・国内大学で学ぶ:専攻、外国語科目、国際交流、留学制度。海外に行かない選択を下に見ない
・短期研修:目的、期間、単位、補助金、運営体制。回数より前後の学びを見る
・大学間交換留学:協定校、対象学部、GPA、英語、費用、派遣実績。大学名だけでなく使える制度を見る
・海外大学への正規進学:学位、総費用、奨学金、卒業後の進路、代わりの案。魅力とリスクを数字で話す
交換留学を選択肢に残すなら、高校で留学先まで決める必要はありません。
ただ、大学選び、入学後のGPA、英語試験、学内募集の時期はつながっています。
個人的には、志望大学の交換留学の募集要項を、高校生のうちに一度親子で読んでおくのがおすすめです。必要なGPAや語学スコアが分かると、大学1年の過ごし方が具体的になります。
高校生から大学2年の応募までの順番は次の記事で学年別にまとめています。
大学を比べるときは、「有名な海外大学と協定がある」だけでは足りません。
自分の学部から応募できるか、実際に派遣されているか、学びたい授業があるかまで見ておきたいところです。
国内大学からの交換留学と海外大学への正規進学は、費用も選考も卒業資格も違います。
「海外」とひとまとめにせず、本人が得たいものに合う方法かどうかで比べてください。
7. 月30分の「家族の世界会議」
特別な教材がなくても、月に1回、家族で1つの問いを見る時間は作れます。
30分は決まった効果がある時間ではなく忙しい家庭でも続けやすい目安です。
流れは次のとおりです。
・0〜5分:子どもが今月の問いを1つ選ぶ(「最近、何が気になった?」)
・5〜15分:地図、本、公式サイトで一緒に確かめる(「これはだれが、いつ出した情報?」)
・15〜20分:同じ点と違う点を探す(「別の人ならどう見そう?」)
・20〜25分:自分たちの暮らしとのつながりを考える(「家の中にも関係するものはある?」)
・25〜30分:次の一歩を本人が決める(「もっと見る、だれかに聞く、ここで終える?」)
低学年なら絵やシール1枚、高学年なら3行のメモで十分です。家族で1冊ノートを作り、疑問と日付だけ残しておけば大丈夫です。
興味が薄い月は休んで構いません。
個人的には、発表会や宿題のようにしないことが、長く続けるいちばんのコツだと思います。
8. お金をかける順番
お金は日常の入口から順にかけていくのがおすすめです。
海外旅行や留学は世界への関心を深める大きな機会になります。
ただ、出発前に問いがなく、用意された場所だけを回り、帰ってから振り返らなければ、高い費用をかけてもその場の思い出で終わりがちです。
お金をかける順番の目安は次の5段階です。
・図書館、地図、料理、音楽、ニュースなど日常の入口:本人から質問や「もっと見たい」が出たら次へ
・地域行事、学校、博物館など運営者のいる場での対面:実際の人に聞きたいことが出てきたら次へ
・管理されたオンライン交流、国内の多文化体験:やり取りを続けたいテーマが見つかったら次へ
・家族旅行、短期研修、海外プログラム:目的と費用を本人が説明できたら次へ
・交換留学、海外大学など長期の選択:進路、学費、安全、代わりの案まで比べられること
必ず1段ずつ進まなくても構いません。見るのは、本人の問いがあるか、人とのやり取りがあるか、終わったあとに考えが変わったかです。
英会話や旅行に申し込む前に、「何に興味があるのか」「終わったあとに何を残すのか」を親子で一度話してみてください。
海外に行く機会は大学に入ってからも作れます。私は大学のプログラムで、アメリカに1か月の短期留学をしました。高校までに家族旅行で無理をしなくても、大丈夫です。
9. 興味を示さないときの接し方
「海外」に反応しなくても、スポーツ、動物、ゲーム、宇宙、料理、服、音楽には強い興味があるかもしれません。
好きな選手が育った町、ゲームを作ったチームの国、渡り鳥の移動、食材の産地など、すでに好きなものの奥にある人や場所を一緒に見てみてください。
入口は海外でなくても構いません。地元の祭りを調べて、別の地域の行事と比べるのも、複数の見方を持つ練習になります。
それでも本人が望まないなら、活動を増やさない判断も必要です。英語教室や交流の予定で週を埋めるより、本人が自由に調べられる余白を残しておくのがおすすめです。
子どもの意見を聞くことは、国連の子どもの権利条約でも重視されています。
保護者にできるのは、興味が動いたときにすぐ地図や本を出せるようにしておくことです。
まとめ
- 小学生のうちは身近なものの出どころを調べ、違いの理由を1つに決めつけずに考える
- 中学生では英語を調べたり人と話したりする道具として使い、活動の計画を本人に任せる
- 高校生では行かない道も含めて進路と費用を比べ、交換留学なら募集要項を一緒に読む
今日やることは夕食の食材を1つ選んで、どこから来たのかを子どもと一緒に地図で探すことです。
参考にしたサイト: OECD「PISA 2018 Global Competence Framework」 / UNESCO「Global Citizenship Education: Topics and Learning Objectives」 / UNESCO「Global Citizenship Education」本文 / 文部科学省「小学校学習指導要領解説 外国語活動・外国語編」 / 文部科学省「小学校学習指導要領解説」 / 外務省「児童の権利に関する条約」全文
公式資料は2026年9月6日時点で確認しています。本記事はOECD・UNESCO・文部科学省等の枠組みを参考に、家庭で実行しやすい形へ編集した提案です。特定の方法で関心や進路が決まることを保証するものではありません。体験談は筆者個人のもので、同じ結果を保証するものではありません。学校の教育課程や活動内容は学校・地域によって異なります。
「お気に入り」追加済みの記事


