【大学間交換留学の教科書編集部】
交換留学を考える大学生のための、大学や留学エージェントから独立した情報サイトです。
全国の旧帝大で交換留学や海外大学院留学を経験したメンバーが、自分たちの経験と公式情報をもとに運営しています。
交換留学で卒業が1年遅れることは、留学をあきらめる理由になりません。
そもそも交換留学に行ったからといって、必ず留年するわけではありません。
留学期間が在学年数に入り、海外で取った単位が認定されれば、1年間行っても4年で卒業できる場合があります。
4年で卒業できるかどうかは、次の4つで決まります。
・在学期間:留学期間が卒業に必要な在学年数に入るか
・単位認定:留学先の科目が何単位、どの区分で認定されるか
・必修・ゼミ:留学中の学期に、必修、実験、実習、ゼミ選考、卒論指導がないか
・学期日程:帰国、成績証明書、単位認定、卒業判定が間に合うか
1年間行って4年で卒業したいなら、2年次に出発するのがいちばん組みやすいです。
3年次から1年間行くなら、卒業を1年遅らせるのも普通の選択肢です。筆者の周囲でも、留学のために卒業時期を1年ずらす学生は珍しくありません。
この記事では、単位と卒業、遅れたときの就活とお金を扱います。何年生で行くかは交換留学は何年生が正解?、期間の決め方は半年と1年、どちらがよい?で説明しています。
1. 留学・休学・留年の違い
「留学すると留年する」とよく言われますが、留学、休学、留年、卒業延期は別のものです。
・交換留学:「留学」または在学扱いになることが多く、留学先の単位を申請できる。4年卒業もできるが、保証ではない
・認定留学:大学の承認を受けて、在学期間への算入や単位認定を受けられる場合がある。制度と履修しだいで4年卒業もできる
・休学留学:所属大学を休学する。休学期間はふつう修業年限に入らないので、その分卒業が遅れるのが一般的
・留年・卒業延期:進級や卒業の条件を予定の年限までに満たさない状態。正式な呼び方は大学による
京都大学の海外留学Q&Aでは、協定に基づく派遣留学は留学期間が修業年限に通算され、単位を満たせば所定の年限で卒業できると説明しています。
一方で、同大学の学部生の実績では、卒業が遅れるケースと遅れないケースがほぼ半々です。
一大学の数字ですが、交換留学なら必ず4年で卒業できるわけでも、必ず遅れるわけでもないことがわかります。
留学の種類から比べたい人は、次の記事で費用・英語・卒業への影響を並べています。
2. 在学年数と単位認定
「在学年数に入る」と「単位が足りる」は別の話です。
在学年数の扱いは、意外と大学ごとに違うんです。
九州大学は交換留学について「留学期間中は在学扱い」と明記しています。
慶應義塾大学は交換留学中の学籍を「留学」とし、休学扱いは認めず、留学期間は申請により1年間に限って在学年数に入れられるとしています。
単位については、大学設置基準第28条により、外国の大学で修得した単位を60単位を超えない範囲で自分の大学の単位とみなせる決まりです。これは法令上の上限で、実際に何単位認めるかは大学・学部の規則しだいです。
九州大学は「留学先大学で取得した単位は帰国後、所属学部・学府に申請し、認められれば九大での単位として取り扱うことができる」としています。
慶應義塾大学も「卒業・修了に必要な単位として認定されることがある」としたうえで、扱いは学部・研究科ごとに違うと注記しています。
留学期間が在学年数に入っても、卒業に必要な単位が足りなければ4年では卒業できません。
逆に単位が認定されても、年1回しか開講されない必修を留学中に逃せば、帰国後に1年待つことになります。
帰国が6月でも、留学先の正式な成績証明書が届くのは数か月後、ということもあります。
大学の案内に「4年間で卒業可能」とあっても、自分の履修表に置き換えて確かめてください。
個人的には、4つの中でいちばん見落としやすいのは学期日程だと思います。単位の話に目が行くと、成績証明書がいつ届くかまでは確認しそびれやすいからです。
単位認定に使う資料は履修中から集めておくと申請が止まりにくくなります。
シラバス・授業時間・評価基準など、保存しておきたい5つの証拠は次の記事で確認してみてください。ヨーロッパの単位の換算はECTSは日本の何単位?で説明しています。
3. 4年卒業を狙う場合
1年行って4年で卒業したいなら、2年次出発がいちばん組みやすいです。帰国後に3年次と4年次が残り、必修、ゼミ、卒論、就活を組み直しやすいからです。
ただ、2年次になってから準備を始めると、多くの場合は間に合わないんです。
交換留学の学内応募は出発のおよそ10〜12か月前にある大学が多く、応募時にTOEFLやIELTSのスコアを求められるからです。
東京大学が公開している交換留学の報告書には、1年次の夏に留学を決め、直後の秋募集に応募して、2年次の7月から約1年間留学した学生がいます。
大学によって募集時期は違いますが、流れはだいたい次のとおりです。
・1年次の春〜夏:GPAを守り、語学試験を受け、協定校と授業を調べる
・1年次の夏〜秋:学内応募、志望理由書、面接
・2年次の夏〜秋:1年間の交換留学に出発
・3年次の春〜夏:帰国し、単位認定と日本での履修を進める
・3〜4年次:ゼミ、卒論、就活を進め、4年の3月に卒業する
2年次に出発すれば必ず4年で卒業できる、という意味ではありません。大学によっては3年次の出発でも4年で卒業できます。
出発時期ごとの応募・帰国・就活の重なりは次の記事で比べています。
4. 卒業を1年遅らせる場合
3年次から1年行き、卒業を1年遅らせるのも普通の選び方です。
1年次の時点では、大学で何を学びたいのか、留学先でどの授業を取りたいのかが、まだ見えていない人も多いはずです。
その状態で「4年で卒業するため」と急いで応募するより、2年次まで専門や課外活動、将来の方向を考えてから、3年の夏〜秋に出発するほうが、留学の中身は濃くなることがあります。
現地でも、入門科目だけでなく自分の関心に近い専門科目を選びやすくなります。
3年の秋から1年行くと、帰国は4年の6月頃です。
卒業を1年延ばせば、帰国直後の7月がそのまま「卒業前年度の7月」になり、インターンが本格化する時期から就活を始められます。
東京大学の留学報告書にも、3年次の秋から留学し、卒業を1年延ばしたことで6〜7月の帰国後にサマーインターンに参加しやすくなった、という学生の例があります。その学生は、キャリア面のデメリットは特に感じなかったと振り返っています。
一人の体験なので全員に当てはまるわけではありませんが、実際に選ばれている組み方です。
個人的には、留学の1年は「早く行くほどよい」とは思っていません。
何を見たいか、何を学びたいかが少しわかってから行くと、授業や出会いから拾えるものが増えます。
卒業が1年遅れることだけを理由に、準備の整った留学をあきらめる必要はないと思います。
5. 卒業延期と新卒枠
留学で卒業が1年遅れても、それだけで新卒の就活ができなくなるわけではありません。
在学を続けて5年目に卒業するなら、その年度の卒業見込者として新卒採用に応募します。日本の新卒採用は卒業年度を基準に動くので、卒業年度が1年後ろにずれれば、就活の日程も1年後ろにずれるだけです。
卒業してから就活する人にも道はあります。
厚生労働省の「青少年の雇用機会の確保等に関して事業主が適切に対処するための指針」(青少年雇用機会確保指針)は、卒業者も新卒の採用枠に応募できるようにすること、少なくとも卒業後3年間は応募できるようにすることを事業主に求めています。
卒業を1年遅らせる学生はそもそも既卒ではありませんが、日本の若手の採用が「4年で卒業した人だけ」に閉じていないのは確かです。
ただ、「どの企業でも選考にまったく影響しない」と言える公開データは見つかりませんでした。
運用は企業ごとに違い、面接で卒業が遅れた理由を聞かれることもあります。
制度上は新卒枠から外れないことと、選考で一切考慮されないことは、分けて考えてください。
卒業延期を隠す必要はありません。伝え方で、相手に見えるものが変わります。
・「留学したかったので、卒業が1年遅れました」:国、期間、卒業延期しかわからない
・「2年次までに関心を○○に絞り、3年秋から△△大学で関連科目を学ぶため、卒業を1年延ばしました」:時期を選んだ理由と、学ぶ目的がわかる
・「現地では□□に取り組み、帰国後はその経験を○○につなげました」:留学中の行動と、帰国後のつながりがわかる
説明するなら、なぜその時期だったか、1年で何をしたか、帰国後にどうつないだかの3つで十分です。
帰国時期ごとの就活の進め方は交換留学中の就活は何から始める?、全体像は交換留学と就活の完全ガイドで説明しています。
留学経験を就活での評価につなげる方法は次の記事にまとめています。
6. 卒業延期前の3つの確認点
就活での印象より、実際にはお金と学籍のほうが大きな壁になりやすいです。
a. 1年分の学費と生活費
卒業を1年延ばせば、その分の授業料、家賃、生活費がかかります。
半期ごとの在籍や秋卒業ができる大学もありますが、扱いは大学ごとに違い、3月卒業にこだわると負担が大きくなることがあります。
家族に相談するときは、「1年遅れる」だけでなく追加でかかる金額まで出して伝えてください。
b. 奨学金の停止・廃止
国内の奨学金が卒業延期に合わせて自動で1年延びるとは限りません。
JASSOの貸与奨学金には毎年「適格認定」があり、学業では「修業年限で確実に卒業又は修了できる見込みがあること」が審査されます。
大阪大学が公開している運用基準では、留年や履修制限で卒業延期が確定した学部生は原則1年以内の「停止」、最終学年の途中で卒業延期が確定した場合は「停止」ではなく「廃止」とされています。
JASSOの在学採用(進学後の申込み)も、留年に相当する期間は申し込めない決まりです。
奨学金を使っている人には、ここがいちばん大きな制約になりがちです。留学の担当と奨学金の窓口、両方に確認してください。
c. 帰国後の予定と在学年限
卒業を遅らせても、帰国後は単位認定、ゼミへの復帰、卒論、インターンの応募が重なることがあります。出発前に、帰国後1年間の時間割をざっくり置いておくと安心です。
在学できる年数の上限も学則で決まっています。ほかの事情が重なったときに上限に触れないか、見ておいてください。
単位認定の結果で思いがけず卒業が延びるのと、最初から1年延ばすと決めて計画するのは別のことです。決めて延ばすなら、履修・奨学金・学費を出発前に整理しておく必要があります。
7. 優先事項別の組み方
卒業の遅れを避けることだけで、組み方を決める必要はありません。何を優先するかで、組みやすい形は次のように変わります。
・1年行き、4年で卒業したいなら、2年次の夏〜秋に出発する。1年次から募集時期、語学、GPAを確認する
・専門や目的を深めてから1年行きたいなら、3年次の夏〜秋に出発し、卒業を1年延ばす。追加費用、奨学金、帰国後の就活を確認する
・追加の学費を負担できないなら、早めに出発するか、半年にする。必修、単位認定、実際の帰国月を確認する
・3年夏から始まる就活に参加したいなら、それより前に帰国するか、卒業年度をずらす。志望企業のインターンと選考の時期を調べる
「半年なら遅れない」「1年なら遅れる」と、期間だけで決まるわけでもありません。
半年と1年の違いは次の記事で就活・英語・卒業・費用から比べています。
8. 教務・留学窓口への7つの質問
「留学したら留年しますか」とだけ聞くと、一般論で終わってしまいがちです。
自分の学部、入学年度、出発する学期、留学期間を伝えたうえで、次の順に聞いてください。
- この交換留学の期間は在学年数に入りますか
- 留学先の単位は、最大何単位、どの卒業要件に認定されますか
- 留学中の学期に履修できない必修、実験、実習、ゼミはありますか
- 成績証明書の到着と単位認定は卒業判定に間に合いますか
- 2年次や3年次に1年間留学した先輩は、いつ卒業していますか
- 卒業を1年延ばす場合、授業料、学籍、秋卒業はどうなりますか
- いまの奨学金や授業料減免は留学中と卒業延期中にどうなりますか
できれば、同じ学部から同じ時期に留学した先輩の例も聞いてください。大学全体の制度が同じでも、学部の必修の置き方で卒業時期は変わります。
まとめ
- 卒業が1年遅れても、留学をあきらめる理由にはならない。交換留学は留学期間が在学年数に入り、単位と必修の条件がそろえば4年で卒業できる場合がある
- 1年行って4年で卒業したいなら2年次出発。3年次から行って卒業を1年遅らせるのも普通の選択肢
- 1年遅れても新卒枠からは外れない。先に確かめるのは、学費・奨学金・帰国後の予定
個人的には、卒業が1年遅れることより、よくわからないまま急いで留学先を決めることのほうがもったいないと思います。4年卒業と1年延期の両方を並べて、納得できるほうを選んでください。
今日やることは学部の履修要項を開いて、留学する予定の学期に必修・ゼミ選考・卒論の予定がないか確かめることです。
参考にしたサイト: 京都大学「海外留学Q&A」 / 京都橘大学「長期留学制度」 / 東京大学「海外留学・国際交流プログラム報告書(ID A24041ほか)」 / 東京大学「海外留学・国際交流プログラム報告書(ID A24046ほか)」 / 厚生労働省「日本人留学生等への就職支援」 / 厚生労働省「就職・採用活動日程に関する考え方」 / JASSO「奨学生の適格認定」 / トビタテ!留学JAPAN「単位・留年・休学の体験談」 / 慶應義塾大学「派遣交換留学」 / 九州大学「留学の手続き・募集情報」
最終確認:2026年9月6日(慶應義塾大学・九州大学・大阪大学・大学設置基準・青少年雇用機会確保指針の記述は2026年9月5日時点)。学籍、在学年数への算入、単位認定、卒業要件、募集時期、奨学金、就職応募条件は、大学・学部・年度・企業によって違います。必ず在籍大学と応募先企業の最新情報を確認してください。体験談は筆者個人のもので、同じ結果を保証するものではありません。
「お気に入り」追加済みの記事


