日本語のススメ|日本語ができて初めて、英語ができる

日本語のススメ、英語の土台は日本語でつくるという文字と、本から言葉が生まれる線画

【大学間交換留学の教科書編集部】

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英語で何かを伝えるとき、その中身を作っているのは、日本語で育ててきた読む力と考える力です。
だから英語を伸ばしたい人ほど、日本語で本を読む時間を残してほしい、というのがこの記事で言いたいことです。

英語ができるようになりたいと思うと、単語帳、文法書、オンライン英会話と、英語に触れる時間を増やすことばかり考えます。
私も長い間、それが当然だと思っていました。
ところが、英語の試験や留学準備を続けるほど、別の壁が見えてきました。
文章を最後まで読んでも、筆者の主張を1文で言えない。質問されても、そもそも自分の意見が浮かばない。
英単語をもう100個覚えても、ここは埋まりません。そこで痛感したのが、読書の大切さです。

「日本語を完璧にしてから英語を始めよう」という話ではなく、日本語で育てた読解力、背景知識、考えを組み立てる力を、英語を学ぶときに置き去りにしないでほしい、という提案です。

1. 日本語力と英語力の関係

英語で伝わる内容は「考える材料」「組み立てる力」「英語で表す力」の3つで決まります。
日本語の読書が育てるのは、主に最初の2つです。
3つ目の英語で表す力は英語で練習しないと身につきません。

分けると、次のようになります。
・日本語でも育てられるのは、主張と根拠を分ける、因果関係や対比を追う、長い文章を要約する、背景知識を増やす、自分の立場と理由をつくる力です
・英語で練習する必要があるのは、英単語・熟語を使う、英文の語順と文法を処理する、英語の音を聞き分けて発音する、考えを英語で素早く取り出す、相手に合う英語表現に直す力です

2つは取り合いになるものではなく並行して伸ばすものです。
日常会話なら、短い決まり文句を素早く出す練習がいちばん助けになります。
一方で、授業、論文、議論、レポート、志望理由書と内容が複雑になるほど、英語に載せる前の中身の差が目立つんです。
個人的には、英語で「何を言えばいいかわからない」ときは、英語力より先に、言う中身がまだできていないことが多いと思っています。

2. 日本語力の3つの要素

ここでいう日本語力は漢字検定の級や、難しい言葉をたくさん知っていることではありません。
見ているのは次の3つです。

a. 正確に読む力

筆者の主張と、自分の感想を分けて読む力です。
「納得できない」と思っても、まず相手が何を言い、どんな根拠を出したかを確かめる。条件、例外、比べている相手、因果関係を落とさずに読みます。
この習慣がないまま、英語のときだけ正確に読めるようにはなりません。知らない単語を調べても、文と文のつながりを追わずに、思い込みで意味を埋めてしまいます。

b. 要約する力

1章読んだあとに、「結局、何を言っていたのか」を1文で言えるかどうかです。
要約はどこが大事かを選んで、自分の言葉で組み直す作業です。
留学先の授業では、論文を読んで要点を説明したり、複数の資料を比べたりします。
日本語で長い文章を要約した経験がないと、英語では単語を追うだけで終わりがちです。

c. 意見に理由を付ける力

「賛成です」「面白かったです」で止めずに、どこが、なぜそう思ったのかまで言えるかです。
授業で「Do you agree with the author?」と聞かれて黙ってしまう原因は、語彙不足だけではありません。
日本語で聞かれても答えが決まらない質問なら、英語ではもっと難しくなります。
まず日本語で考えを持ち、それを今の英語力で言える大きさまで小さくするという順番で大丈夫です。

3. 第一言語と第二言語の研究

第一言語で育てた学術的な言語能力が、第二言語での学習にも関わるという考え方は、以前から研究されています。
Jim Cumminsは1979年の論文で、2つの言語は表面が違っても、認知・学術面の力には共有される部分があるという「言語相互依存仮説」を示しました。

一方、JeonとYamashitaが2014年に行ったメタ分析では、第二言語の読解に関わる要素として第一言語の読解力も検討されていますが、特に強い関連が出たのは第二言語の文法・語彙・文字処理でした。
研究が示すのは「日本語だけで十分」ということではないんです。「日本語の本を読めば英語が伸びる」とは言えません。
日本語で読む力は英語の読解にも関わりうるけれど、英語の語彙や文法が足りなければ、その力を十分に使えない、というのが実態に近いです。
中学英文法から不安な人は、中学英文法も不安な大学生のやり直し方から始めるのが早いです。

文部科学省の「言語活動の充実に関する基本的な考え方」も、国語で記録・要約・説明・論述の力を育て、ほかの教科の学習につなげる考え方を示しています。
なお、これは日本語を主に使って学んできた人に向けた話です。複数の言語で育ってきた人に「日本語のほうが上でなければならない」と言うつもりはありません。
いちばん深く読んで考えられる言語を土台にして、複数の言語を行き来すればいいと考えています。

4. 交換留学で英語を使う場面

留学前は、「友達と英語で話せるか」がいちばんの不安になりがちです。
でも交換留学では学生として授業を受けるので、会話以外の場面で英語を使う時間が長くなります。
場面ごとに「英語そのものの力/言語に関係なく必要な土台」を並べると、次のとおりです。

・講義を聞く:音・専門用語・速さに慣れる/話の流れを予測して要点を選ぶ
・論文や教科書を読む:語彙・文法・英文の処理/主張、根拠、反論、条件を分ける
・授業で発言する:短い時間で英語を取り出す/自分の立場と理由を持つ
・レポートを書く:英語の表現・引用・書き方の作法/問いを立てて、順序と根拠を組む
・グループ課題:確認・提案・反対の言い方/相手の論点を理解して、合意できる点を探す

TOEFLの公式案内でも、Writingでは正確な英文に加えて、意見を述べ、理由を示し、ほかの人の見方に応える力まで扱っています。
英語に自信がなくても行ける留学と、英語で専門を学ぶ交換留学の違いは、次の記事で整理しています。

5. 読書で育つ4つの力

a. 気持ちを言葉にする力

語彙が増えると、「不安」「焦り」「違和感」「劣等感」のように、似た気持ちを分けて言えるようになります。
自分が何に困っているかを日本語ではっきりさせておけば、英語では今使える表現に置き換えるだけです。
同じ細かさで英訳できなくても、言い直したり、例を足したりすれば伝わります。

b. 長文を読み通す力

短い動画や投稿は入口としては便利です。
一方で本は、前の章を覚えておき、あとの反論と結びつけて、全体の結論をつかむ練習になります。
英語の論文だと、単語の処理にも力を取られますよね。日本語で長い文章に慣れていないと、2つの負担が同時に来ます。

c. 背景知識

同じ英文でも、テーマを知っている人のほうが、固有名詞や議論の流れを予測しやすいです。
経済、歴史、宗教、科学、政治をすべて英語でゼロから学ぼうとすると、内容と英語の両方で止まります。
留学先で取りたい分野が決まっているなら、先に日本語で入門書を読んでおくと、英語の授業では表現のほうに集中できます。

d. 意見をつくる力

1冊読めばすぐ意見ができるわけではありません。
ただ、違う時代や立場の考えに長く付き合うと、「どこまで賛成か」「何が引っかかるか」を考える材料が増えます。
志望理由書も同じで、よくある言葉を英訳するだけでは自分らしさが出ません。何を学びたいのか、なぜその授業なのか、帰国後にどうつなげるのかを組み立てる必要があるんです。
個人的には、志望理由書でいちばん時間がかかるのは英語にする作業より、日本語で中身を決める作業だと思っています。
構成と例文は交換留学の志望理由書の書き方にまとめています。

6. 本の選び方と読み方

最初は、自分が英語でも話してみたいテーマを日本語で読むのがおすすめです。
難しい古典から入る必要はありませんし、小説や漫画も立派な入口です。
目的別に選ぶなら、次のとおりです。

・背景知識を増やす:新書、入門書、長めの解説記事 → 初めて知ったことを3つ書く
・論理を追う:賛否が分かれるテーマの本 → 主張、根拠、反論を分ける
・人の立場を想像する:小説、ルポルタージュ、伝記 → 1人の判断を別の立場から考える
・専門の英語に備える:取る予定の分野の概説書 → 大事な用語を日本語と英語で対応させる
・英語で話す材料をつくる:本当に好きな分野の本 → 60秒で友人に説明する

最初の1冊が難しすぎたら、途中で替えてかまいません。
読んだ冊数より、読んだ内容を自分の言葉にした回数のほうが力になります。
読み方は次の4段階です。毎日全部やる必要はありません。

  1. 日本語で1日15分読む。知らない言葉は全部調べず、大事なものだけ確認する
  2. 「この部分でいちばん言いたかったことは何か」を50〜100字で書く
  3. 賛成・反対・疑問のどれか1つと、その理由を書く
  4. 週に1回、同じテーマの短い英語記事を読み、大事な単語を3つ拾う。できれば要約を2〜3文の英語で言ってみる

2と3は読んだあとの3行メモにすると続けやすいです。
・筆者がいちばん伝えたいこと
・その根拠として使われたもの
・自分が賛成・反対・疑問に思ったこと
この3行が書ければ、授業で意見を聞かれたときの答えの元になります。

英語で要約するときは、日本語を1語ずつ訳さないでください。
「これだけは残したい意味」を決めて、自分が使える英文まで小さくします。
難しい日本語を難しい英語にするより、短くても主語と理由がはっきりした英語のほうが伝わります。
日本語で論点を整理することと、できあがった日本語の文をそのまま英訳することは別です。

英検準1級を目標にする意味と、交換留学ではTOEFL・IELTSを優先したほうがいい理由は、英検準1級は取る必要があるかで目的別に整理しています。

7. 試験前の優先順位

TOEFLやIELTSの締切が迫っているなら、英語の試験対策を先にしてください。
語彙、問題形式、時間配分、リスニング、スピーキングは、英語で練習しないと身につきません。
日本語の読書は目先の点数の代わりではなく長い目で見た土台です。

時期ごとの置き方は次のくらいが目安です。
・応募まで半年以上:語彙と4技能を計画的に伸ばす。関心のある分野の本を続けて読む
・試験まで1〜2か月:公式問題、苦手な技能、時間配分を優先。読書は1日10〜15分で、負担を増やさない
・留学先が決まった:講義、発言、レポートの練習。取る分野を日本語と英語の両方で読む
時期に関係なく、英語の勉強に疲れているときは、勉強量と目標を見直してみてください。純粋に読みたい本に戻ると、興味を取り戻しやすいです。

高校生・大学1年生のうちに、英語、GPA、応募時期、志望理由をどう準備するかは次の記事にまとめています。

8. 翻訳AI時代の読む力

翻訳や生成AIを使えば、英文を日本語にしたり、英語の下書きを作ったりできます。
そのぶん人間に残るのは、「要約で大事な条件が落ちていないか」「根拠と意見が混ざっていないか」「本当に自分が言いたいことか」を判断する仕事です。
OECDが示す読解リテラシーも、文章を理解するだけでなく、使い、評価し、複数の情報を照らし合わせることまで含めています。
英語を書く速さはAIで上げられても、何を書くかを選ぶところまでは任せられません。
個人的には、AIを使う場面が増えるほど、日本語で読んで確かめる力の差が出ると思っています。

9. 保護者の方へ

子どもに英語を身につけてほしいと思うと、英会話や資格の勉強に早く、たくさん時間を使いたくなります。
英語に触れる時間はもちろん必要です。
ただ、そのために日本語の読書や、好きな分野を調べる時間、家族と理由を話す時間まで削る必要はありません。

難しい内容に興味を持ったのに「英語の本で読まないと意味がない」と言うと、好奇心より英語の負担が勝ってしまうことがあります。
まず日本語で夢中になって、もっと知りたくなったら英語の動画や本に広げるという順番で十分です。
図書館で本人に選ばせる、家族も別の本を読む、読んだあとにテストをしない、途中でやめても責めない。読書を評価の対象にしないことが、長く続く入口になります。

小学1年生から高校生まで、世界への関心を年齢別にどう育てるかは次の記事にまとめています。

まとめ

  • 英語で伝わる中身は日本語で育てた「正確に読む・要約する・理由を付ける」力で決まる
  • ただし英語の語彙・文法・音の練習は欠かせないので、2つを並行する
  • 1日15分読んで、1文の要約と1つの意見を残す。週に1回、同じテーマの英語につなげる

英語で何を読み、何を考え、何を伝えるかを決めているのは、英語の外側で積み重ねてきた知識と言葉です。
今日やることは気になっていた本を15分だけ開いて、「この部分は何を言っていたか」を1文で書くことです。


参考にしたサイト: Cummins(1979)「Linguistic Interdependence and the Educational Development of Bilingual Children」 / Jeon・Yamashita(2014)「L2 Reading Comprehension and Its Correlates」 / 文部科学省「言語活動の充実に関する基本的な考え方」 / OECD「Reading literacy」 / ETS「TOEFL iBT Writing Section」

最終確認:2026年9月6日。本記事は、主に日本語を使って学んできた中高生・大学生を想定した筆者の提案です。体験談は筆者個人のもので、同じ結果を保証するものではありません。第一言語と第二言語の関係には個人差があり、研究上の関連は、すべての人に同じ学習順序や因果関係を保証するものではありません。TOEFL・IELTSの形式、評価基準、留学先の語学要件は変更されるため、受験・応募時は各公式情報をご確認ください。