【大学間交換留学の教科書編集部】
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就職活動の進め方をまだつかめていない場合は、先に【必読】就活前のQAを超短縮したまとめを読んでほしい。就職活動の基本を押さえたうえで本稿を読むと、企業研究の要点を理解しやすい。
要旨
本稿は、三菱地所の2026年3月期の有価証券報告書と、それを加工した公開データをもとに、同社の事業構造、海外展開の規模、海外勤務につながる人材育成の制度、働き方と処遇、経営陣と株主構成を整理し、就職活動で同社を検討する学生が確認すべき点を示すものである。
主な結果は3点に要約できる。第一に、営業収益に占める海外の割合は12.7%にとどまるが、海外事業セグメントは営業利益の約16%、セグメント資産の約25%を占めており、利益と資産の面では海外の比重が大きい。第二に、海外事業セグメントの従業員は420人で、その多くは米国・英国・シンガポールなどで現地採用された社員と考えられる。日本から海外に出る社員は少数であり、現地の組織や投資を管理する役割を担う形になる。第三に、社長を含む執行役16人のうち5人が海外の現地法人を率いた経歴を持ち、海外勤務は経営幹部への経路の一つになっている。
目次
1 本稿の目的と方法
1.1 目的
就職活動における企業研究では、会社説明会や採用サイトの情報が中心になりやすい。これらは会社の魅力を伝えるために作られた資料であり、他社と同じ基準で比べることが難しい。本稿は、すべての上場企業が同じ様式で作成する公的な開示書類を用いて、三菱地所を他社と比較できる形で整理することを目的とする。
本シリーズでは特に、「その会社に入社したとき、海外で働く機会はどの程度あり、どのような形をとるのか」という問いを中心に置く。交換留学を経験した学生や、海外に関わる仕事を志望する学生にとって、この点は会社選びの重要な判断材料になるからである。
1.2 資料
本稿が主に用いる資料は、有価証券報告書(以下、有報)である。有報は、上場企業が事業年度ごとに金融庁へ提出することを法律で義務づけられた書類であり、事業の内容、業績、従業員の状況、役員の経歴、大株主、人材の育成方針などが決まった様式で記載される。金融庁の電子開示システムであるEDINETで、誰でも無料で閲覧できる。
有報には監査法人の監査を受けた財務諸表が含まれ、虚偽の記載には罰則がある。そのため、記載された数値の信頼性は高い。一方で、有報は投資家に向けた書類であり、個々の社員の配属先や駐在の時期といった情報は含まれない。本稿で示すのは、海外で働く機会の「規模と仕組み」であり、個人のキャリアを予測するものではない。
このほか、10年分の業績、事業セグメント別の数値、大量保有報告書の情報は、有報などをもとにIRBANKが整理したデータを用いた。同業他社との比較には、時価総額3,000億円以上の上場企業約500社の有報から当サイトが集計したデータ(2026年版)を用いた。なお、三菱地所の地域別の営業収益、平均年齢、役員の人数は、当サイトの集計に誤りや欠けがあったため、有報の原文で確認した値を用いている。
1.3 用語の定義
本稿で繰り返し用いる用語を、先に定義しておく。
連結と単体 「単体」は三菱地所という会社そのもの、「連結」は三菱地所が支配する子会社を含めたグループ全体を指す。就職活動で「三菱地所に入社する」という場合、雇用契約を結ぶのは単体の三菱地所である。
営業収益と営業利益 営業収益は、ビルの賃料、マンションの販売代金、物件の売却額など、本業で得た金額の合計である。不動産会社では売上高の代わりにこの言葉が使われることが多い。営業利益は、そこから本業にかかった費用を差し引いた利益であり、事業ごとの稼ぐ力を比べるのに適している。純利益は、さらに税金などを差し引いて最終的に残った利益である。
セグメント資産 各事業が持っているビル、土地、販売用の不動産などの資産の金額である。不動産会社では、どの事業にどれだけの資産を投じているかを示す重要な数値になる。
関係会社 子会社と、出資して経営に影響を与えている関連会社をまとめた呼び方である。有報の「関係会社の状況」には、このうち主要な会社が所在地とともに記載される。
出向 会社に在籍したまま、子会社など別の会社で働くことである。
パーセンタイル 集団の中での位置を0から100で表した数値である。たとえば「80パーセンタイル」は、比較した500社の中で下から80%の位置、つまり上位20%に入ることを意味する。
2 会社の概要
2.1 総合不動産(デベロッパー)という事業
三菱地所は、総合不動産会社、いわゆるデベロッパーである。デベロッパーの事業は、土地を取得してオフィスビルや商業施設、住宅を開発し、それを賃貸して賃料を得る、または売却して利益を得ることが中心である。開発した建物の運営・管理や、投資家から資金を預かって不動産を運用する事業も手がける。
三菱地所の特徴は、東京の大手町・丸の内・有楽町地区に多くのオフィスビルを持ち、その地区のまちづくりを長く担ってきたことにある。同社はこの地区の事業を独立したセグメント(丸の内事業)として開示している。また、近年は開発した物件を投資家に売却する事業や、不動産ファンドの運用など、自社で資産を持たずに収益を上げる事業(ノンアセットビジネス)も拡大している。
2.2 6つの事業セグメント
三菱地所の報告セグメントは、コマーシャル不動産、丸の内、住宅、海外、投資マネジメント、設計監理・不動産サービスの6つである。図1は、2026年3月期のセグメント別の営業収益と営業利益を示したものである。

営業収益と営業利益が最も大きいのはコマーシャル不動産で、営業利益は1,357億円であった。全国のオフィスビル、商業施設、物流施設、ホテル、空港などを扱う。次いで丸の内が975億円、住宅と海外がそれぞれ573億円と571億円である。
注目すべきは海外事業である。営業収益は1,994億円と全体の約11%であるが、営業利益は前年度の458億円から571億円に増え、セグメント利益の合計の約16%を占める。さらにセグメント資産は2兆363億円で、全体の約25%にあたる。一方、海外事業の連結従業員数は420人で、全体の11,659人の約4%にすぎない。少ない人数で大きな資産を動かす事業であり、1人あたりが担う資産と利益の規模が大きい。
2.3 業績の推移
2026年3月期の営業収益は1兆7,461億円、営業利益は3,297億円、純利益は2,225億円であった。図2は、過去10年の純利益の推移である。

10年前の2017年3月期の純利益は1,027億円であり、この10年で約2.2倍に増えた。2021年3月期にわずかに減少したほかは毎年増え続けており、2026年3月期は10年で最も大きい。資源価格の影響を大きく受ける総合商社と比べると、賃料収入を土台とする安定した利益構造であることが分かる。
3 海外展開の規模
3.1 地域別の営業収益と資産
三菱地所の2026年3月期の営業収益を地域別に見ると、日本が87%、米国が9%、アジアが2%、欧州が1%であった(図3)。日本以外を合計した海外の比率は12.7%であり、前年度の11.8%から上昇した。不動産会社の収益の大部分は国内のビルや住宅から生まれるため、海外の比率は総合商社などと比べて大幅に低い。

ただし、資産で見ると海外の比重は大きくなる。2026年3月期の有形固定資産5兆1,176億円のうち、米国が5,742億円、欧州が3,408億円、アジアが387億円であり、海外の合計は18.6%にのぼる。欧州の営業収益は全体の1%程度であるのに、有形固定資産は3,400億円を超えており、ロンドンなどで開発中・保有中の大型のビルが多いと考えられる。
3.2 海外拠点の分布
有報の「関係会社の状況」に主要な会社として記載された海外の子会社・関連会社は、5か国・地域に19社であった。米国が8社で最も多く、シンガポールが4社、英国と香港がそれぞれ3社、オーストラリアが1社である(図4)。

ただし、主要な会社の一覧は海外事業の全体を表していない。有報の「事業の内容」によれば、海外事業を担う会社は連結子会社248社と持分法適用関連会社99社の計347社にのぼる。米国ではMEC Group International Inc.を、英国・フランス・スペイン・スウェーデンなどではMitsubishi Estate London Limitedを通じて事業を行い、シンガポール、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、マレーシア、オーストラリア、インドでは、Mitsubishi Estate Asia Pte. Ltd.などを通じて開発事業を展開している。中国大陸と台湾でも開発に参画している。
3.3 海外比率の解釈
三菱地所の海外事業は、営業収益の比率だけを見ると小さいが、利益と資産では全社の約16%から25%を占める。同社は「長期経営計画2030」で、海外事業について欧米豪を中心とした先進国への注力を掲げている。
海外の事業の多くは、ビルを開発して賃貸し、一定期間後に売却する形をとる。このため、海外の利益は物件の売却の時期によって年ごとに変動しやすい。2026年3月期にも、同社は物件の売却が後ろにずれたことで、海外事業の営業利益が直近の予想を129億円下回ったと説明している。
4 人材育成と海外勤務の制度
有報には「人的資本」と呼ばれる、人材への投資や育成方針を記載する欄がある。三菱地所はこの欄で求める人財像と育成の方針を示しているが、海外派遣の人数や研修の費用といった、海外勤務に直接関わる数値は記載していない。そのため本節では、人財戦略の考え方と、従業員の状況から読み取れる海外事業の人員構成を整理する。

4.1 求める人財像と3つの役割
三菱地所は、企業理念から導いた求める人財像として、「志」ある人、「現場力・仕事力」のある人、「誠実・公正」である人、「組織」で戦える人、「変革」を起こす人の5つの要素を掲げている。そのうえで、「長期経営計画2030」を達成するために人財に求める役割を3つに整理している。
1つ目は「Professional」であり、高い専門性によって新たな価値を生み出すことである。同社は、国内の大型開発に加えて海外事業の強化やノンアセットビジネスの拡大を進めるため、各領域の専門人財の採用を強化するとしている。2つ目は「Change Maker」であり、社内外の協業によって変革を起こすことである。3つ目は「As One Team」であり、一人ひとりの強みを組み合わせて組織の価値を最大化することである。同社は、それぞれの価値観や意見を自由に表明できる環境を「オピニオンダイバーシティ」と呼び、その推進に取り組んでいる。
4.2 海外事業の人員構成
海外事業セグメントの連結従業員420人の内訳は、有報の設備の状況から推定できる。主な在外子会社の従業員数は、米国のRockefeller Groupの各社で計321人、英国のMitsubishi Estate London Limitedで20人、シンガポールなどのMitsubishi Estate Asia Pte. Ltd.で53人である。また、投資マネジメント事業では、米国のTA Realtyに135人、英国のPatron CapitalとEuropa Capitalに計97人、シンガポールのMEC Global Partners Asiaに18人がいる。
一方、三菱地所本体の就業人員1,286人のうち、海外事業セグメントに属するのは26人である。これらの数値は、同社の海外事業が主に現地で採用された社員によって運営され、日本から赴任する社員は少数であることを示している。同社は事業のリスクとして、海外の現地法人では現地採用社員の割合が今後も増える見込みであり、現地法人の社員のマネジメントがこれまで以上に重要になると述べている。
このことから、三菱地所で海外に出る場合は、現地の開発チームの一員として働くというよりも、現地で採用された専門家を率い、投資や開発の判断を本社とつなぐ役割を担う形が多いと解釈できる。
4.3 グループ会社への出向
三菱地所は2026年3月期から、従業員数の基準を「正社員(社外への出向者を含む)」に変更した。正社員は1,729人であり、他社からの出向者を含め他社への出向者を除いた就業人員は1,286人である。この差から、少なくとも443人、正社員の約4分の1が他社に出向していると考えられる。
出向先の多くは三菱地所レジデンスや三菱地所プロパティマネジメントなどのグループ会社であるとみられるが、海外の子会社への出向も含まれると考えられる。後に見る執行役の経歴にも、グループ会社や海外の現地法人の社長を務めた後に本社の経営幹部となった例が多い。
5 働き方と処遇
5.1 給与・年齢・勤続年数
2026年3月期の三菱地所本体の平均年間給与は1,759万円(前年度比4.7%増)、平均年齢は42歳6か月、平均勤続年数は16年4か月であった。図5は、不動産業の各社と平均年齢・平均年間給与を比較したものである。

平均年間給与は、比較した不動産業13社の中で3位であった。1位はヒューリックの2,295万円、2位は三井不動産の1,856万円であり、不動産業の中央値966万円の約1.8倍にあたる。ただし、有報の平均年間給与は職種を問わない全社員の平均であり、職種や年次による差は反映されていない。
5.2 労働時間と多様性
三菱地所の有報には、残業時間、有給休暇の取得率、離職率の数値は記載されていない。男性の育児休業取得率は129.1%であった。この指標は当年度に子が生まれた男性社員の数に対する取得者の数で計算されるため、前年度以前に生まれた子についての取得が含まれると100%を超える。同社は2030年度まで毎年100%以上を維持することを目標にしている。
女性管理職比率は13.5%(2026年4月1日時点)であり、同社は2030年度までに20%超、2040年度までに30%、2050年度までに40%とする目標を掲げている。採用では新卒・キャリアとも女性比率40%を目標とし、2025年度の新卒採用の女性比率は51.2%であった。男女の賃金の差異は、男性の賃金を100としたときの女性の賃金が54.3である。総合職に限ると、管理職同士では80.9、非管理職同士では79.1であり、差の主な要因は管理職に就く女性の数の少なさにあると同社は説明している。
5.3 組織の構造:本社1人あたりのグループ社員数
三菱地所の連結従業員数は11,659人、本体の就業人員は1,286人である。連結を単体で割った値は9.1となり、本社の社員1人に対してグループ全体で約9人の社員がいる計算になる。本稿ではこの値を「本社レバレッジ」と呼ぶ。
当サイトの集計で同じ計算をすると、三井不動産は14.0、住友不動産は7.0であった。三菱地所の値は不動産大手の中で中程度である。本社の社員がビルの開発や海外の投資判断などを担い、ビルの運営管理や住宅の販売・管理はグループ会社が担うという分業の構造であると考えられる。
6 経営陣と株主
6.1 経営陣の経歴
三菱地所は指名委員会等設置会社である。取締役会が経営を監督し、業務の執行は取締役会が選んだ「執行役」が担う仕組みである。2026年6月24日時点で、社内出身の取締役は7人であり、このうち3人の略歴に海外の現地法人の社長などの役職が現れる。
たとえば、2023年に社長に就任した役員は、2015年に米国のロックフェラーグループインターナショナル社の社長を務め、その後、欧米事業部長、海外業務企画部長を経て社長に就任している。副社長を務める役員は2018年に三菱地所アジア社の社長を、経理部などを担当する役員は2014年に三菱地所ロンドン社の社長を務めた。
執行役に目を向けると、社長を含む執行役16人のうち5人が、米国、英国、シンガポールの現地法人の社長や幹部を務めた経歴を持つ。現在の海外事業グループの統括役員も、米国のRockefeller Groupの幹部と三菱地所ニューヨーク社の社長を兼ねた経歴を持つ。海外の現地法人を率いる経験は、同社の経営幹部への重要な経路の一つになっていると解釈できる。また、社外取締役には、日豪のビジネス交流に長く携わり、在日オーストラリア・ニュージーランド商工会議所の名誉会頭を務める人物が含まれている。
6.2 株主構成
三菱地所の株式のうち、外国法人等が保有する割合(外国人持株比率)は49.8%であり、株主のほぼ半分が海外の投資家である。当サイトの集計では、不動産業の中で三井不動産(51.2%)に次いで高い。図6は、上位10位までの大株主を種類別に合計したものである。

上位には、投資信託や年金の資産を管理する国内の信託銀行の口座が並び、合計で21.7%を占める。次いで海外の機関投資家の口座が合計12.0%、明治安田生命保険が3.5%、竹中工務店が1.5%である。大量保有報告書は、株式の5%超を保有した投資家が提出する書類であり、有報には野村證券グループ、ブラックロック・グループ、三菱UFJフィナンシャル・グループの大量保有報告書の内容が注記されている。
株主の半分が海外の投資家であることは、同社の経営が国際的な基準での評価にさらされていることを意味する。資産の効率や利益の成長を数値で説明することが、社員にとっても日常的に求められる環境であると考えられる。
7 総合評価
7.1 5つの指標による位置づけ
本シリーズでは、海外で働く機会に関わる5つの指標を用いて、約500社の中での各社の位置を示している(指標の定義は付録を参照)。図7は、三菱地所の各指標のパーセンタイルである。

三菱地所は、海外勤務・研修に関する記述が88、現地化に関する記述が81と高い一方、本社レバレッジは64、海外子会社がある国の数は46、海外売上比率は26であった。5つの指標を重みづけして合計した総合指数では、上位30〜60%にあたるTier Bに分類された。なお、1.2節で述べたとおり、海外売上比率と役員の人数は原文で確認した値に直して比べ直している(他社の順位は再計算していない)。
海外子会社がある国の数が46にとどまるのは、関係会社の状況に記載される主要な会社が少ないためである。3.2節で見たとおり、海外事業を担う会社は347社にのぼり、指標が示すよりも海外の事業は広い。
7.2 4類型による位置づけ
本シリーズでは、海外売上比率の大小と、有報に記載された海外勤務・現地化の記述の傾向から、会社を4つの類型に分けている(図8)。

三菱地所は、海外売上比率が50%未満であり、海外勤務に関する記述や海外経歴を持つ役員が多いことから、このシリーズの分け方では「育成投資型」に分類される。ただし、同社の有報には若手の海外派遣の制度や人数は記載されておらず、この分類は役員の経歴や海外事業に関する記述の多さによるところが大きい。海外で働く機会は、全社員に開かれた制度というよりも、海外事業に関わる限られたポストを通じて得られるものと考えられる。
8 就職活動への示唆
8.1 面接・OB訪問で確かめるべき点
以上の分析から、有報だけでは分からず、社員に直接確かめる価値がある点が3つ導かれる。
- 海外事業グループには、入社何年目ごろに、どのような経験を積んだ社員が配属されることが多いか。若手が海外の現地法人に出向する例はあるか(4.2節)
- 海外の現地法人では現地採用の社員が多数を占めるが、日本から赴任する社員にはどのような役割と能力が求められるか(4.2節、6.1節)
- 国内のビルや住宅の事業で積んだ経験は、海外の開発や投資マネジメントの仕事にどのように生かされるか(2.2節、3.3節)
質問の際には、根拠となる情報を添えるとよい。たとえば「有価証券報告書で、海外事業の営業利益が全体の約16%を占める一方、従業員は420人と拝見しました」と前置きすれば、企業研究をしたうえでの質問であることが伝わる。また、回答が「部署による」であった場合は、相手自身の経験を尋ねることで、具体的な情報を得やすくなる。
OB・OG訪問の相手を見つける方法は、交換留学前にOB・OG訪問をする理由|ビズリーチ・キャンパスの使い方と注意点で詳しく解説している。
8.2 交換留学の経験との接点
三菱地所は、人財に求める役割の1つに「Change Maker」を挙げ、社内外のネットワークを活用して新しい視点から課題を見つけ、協業によって変革を起こすことを求めている。また、海外の現地法人では現地採用の社員を率いる力が重要になっている。
交換留学の経験は、この2つの点と重なる。ただし、留学したという事実そのものは差がつきにくい。評価されやすいのは、価値観の異なる人々と協力して物事を前に進めた経験であると考えられる。たとえば、留学先の寮で共用スペースの使い方をめぐって学生同士の意見が分かれた際に、国ごとの生活習慣の違いを聞き取って利用のルールを作り直した経験は、多様な意見を生かす同社の考え方に通じる。また、同社の海外事業はニューヨーク、ロンドン、シンガポールなどの都市で展開されているため、これらの都市に留学した学生は、現地で見たまちの使われ方や再開発の様子を、同社のまちづくりと結びつけて話すこともできる。
9 本稿の限界
本稿の分析には、次の5つの限界がある。
- 平均値の限界:有報の平均年間給与や平均年齢は全社員の平均であり、職種や年次別の分布は分からない。
- 地域別の数値の限界:地域別の営業収益は会社の所在地による区分であり、社員が働く場所の分布を直接表すものではない。
- 海外勤務の数値の限界:三菱地所の有報には、海外に駐在している社員の数や海外派遣研修の人数が記載されていない。4.2節の人員構成は在外子会社の従業員数からの推定である。
- 比較の限界:不動産業の比較対象は13社と少なく、地域別の収益を開示している会社も一部に限られる。
- 時点の限界:本稿の数値は2026年3月期の有報に基づく。従業員数の基準が2026年3月期から変わっており、前年度との比較には注意が必要である。
まとめ
まとめると、三菱地所は次のような特徴を持つ会社である。
- 営業収益に占める海外の割合は12.7%だが、海外事業は営業利益の約16%、セグメント資産の約25%を占め、347社の子会社・関連会社を通じて欧米やアジアで展開している
- 海外事業の従業員は420人で多くは現地採用と考えられ、日本から海外に出る社員は、現地の組織や投資を率いる少数の役割を担う
- 社長を含む執行役16人のうち5人が海外の現地法人を率いた経歴を持ち、海外勤務は経営幹部への経路の一つになっている
最初の一歩として、EDINETで三菱地所の有価証券報告書を開き、「事業の内容」の海外事業の項と、「設備の状況」の在外子会社の従業員数を読んでほしい。同社の海外事業がどの都市で、どのくらいの人数で運営されているかが分かる。
付録 指標の定義:海外売上比率は、地域別の営業収益のうち日本以外の割合。海外子会社がある国の数は、「関係会社の状況」に記載された主要な海外子会社・関連会社の所在国の数。本社レバレッジは、連結従業員数を単体従業員数で割った値。海外勤務・研修に関する記述は、有報本文における海外勤務・派遣・研修に関する記述の件数に、社内出身の役員のうち海外勤務経験のある人数を加えたもの。現地化に関する記述は、外国人管理職や現地人材の登用に関する記述の件数。いずれも時価総額3,000億円以上の上場企業約500社の中でのパーセンタイルで示した。総合指数は5指標を30%・25%・10%・25%・10%の重みで合計し、上位10%をTier S、30%までをTier A、60%までをTier B、それ以外をTier Cとした。4類型は、海外売上比率50%を境に、海外勤務に関する記述と現地化に関する記述のどちらが多いかで分けた。
データの出典:三菱地所 有価証券報告書(第122期、2025年4月1日〜2026年3月31日)。10年分の業績、セグメント別の数値、大量保有報告書の情報は IRBANK による(出典:金融庁EDINET、加工:IRBANK)。同業他社との比較と5つの指標は、各社の有価証券報告書をもとに当サイトが集計した。
最終確認日:2026年10月26日
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