【大学間交換留学の教科書編集部】
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慶應義塾大学が公開している派遣交換留学生552人の卒業後進路を集計すると、交換留学経験者はコンサル・金融・商社・航空を中心に、幅広い企業へ進んでいました。
ただし、このデータから「交換留学に行けば就活に強くなる」とまでは言えません。
わかったことは次の4つです。
・552人のうち正規雇用は397人、進学は計107人
・就職先の上位にはコンサル、金融、商社、航空が並ぶ
・比較できた6社では、交換留学経験者の就職比率が慶應全体の1.61〜3.52倍
・ただし、交換留学の因果効果を示すデータではない
1. 使ったデータと比較の方法
交換留学経験者のデータは慶應義塾大学の「2024年度 派遣交換留学生 卒業後進路一覧」です。
対象は、2021〜2024年度の派遣交換留学生のうち、2022〜2024年度に卒業・修了した552人です。
比べたのは次の2つの集団です。
・派遣交換留学経験者:552人(うち正規雇用397人)。進路の内訳と企業別の人数を再集計
・慶應全体:就職者16,291人(2022〜2024年度の計。2022年度5,448人、2023年度5,399人、2024年度5,444人)。各年度の就職者数と就職者数上位企業を合算
企業別の比較では両方の資料で人数を確認できる同名の企業6社について、各企業への就職者数 ÷ その集団の正規雇用・就職者数を計算しました。
読み方の注意:慶應全体の企業別の公表値は各年度の上位20社までです。上位20社にない企業を「就職者ゼロ」とは扱っていません。
また、学部・研究科などの構成の差は調整できないため、以下は関連を見るための単純比較です。
2. 552人の進路の内訳

正規雇用は397人で、全体の71.9%でした。
大学院進学70人と、専門学校・外国の学校等への進学37人を合わせると、進学は107人、19.4%です。
この71.9%を一般的な意味の「就職率」と呼ぶのは、実は正確ではないんです。
分母に進学者も含まれ、資料上の「正規雇用」には進学就職も含まれるからです。ここでは卒業後の進路の構成比として扱います。
3. 就職先の上位10社
就職先の上位10社は、コンサル・金融・商社が目立ちます。
正規雇用397人の就職先を人数順に並べると、上位10社は次のとおりです(同順位は同人数。企業名は公表資料の表記どおり)。
1位 EYストラテジー・アンド・コンサルティング:17人
2位 PwCコンサルティング:12人
2位 アクセンチュア:12人
4位 日本航空(JAL):9人
4位 三井物産:9人
4位 デロイト トーマツ コンサルティング:9人
7位 野村證券:8人
7位 東京海上日動火災保険:8人
7位 伊藤忠商事:8人
10位 三井住友銀行:7人
上位10社を分類すると、コンサル4社に50人、金融・保険3社に23人、商社2社に17人、航空1社に9人です。
公表リスト全体では、三井物産、伊藤忠商事、三菱商事、丸紅、住友商事、双日の6社に計30人が就職していました。
国際案件や海外拠点との接点を持ちやすい企業が目立つのは確かです。
ただ、職種や配属先まで国際系だったとは限りません。企業名から確認できるのは「どこに就職したか」までです。
4. 慶應全体との比較
慶應全体と比べると、比較できた6社の就職比率は1.61〜3.52倍でした。
上位10社のうち、EYストラテジー・アンド・コンサルティング、PwCコンサルティング、アクセンチュア、デロイト トーマツ コンサルティング、東京海上日動火災保険、三井住友銀行の6社は、慶應全体でも2022〜2024年度の3年すべてで就職者数の上位20社に入っていました。野村證券も2年で上位20社に入っています。
つまり上位企業の多くは交換留学経験者だけの特徴というより、慶應全体の傾向とも重なります。
そのうえで、人数を確認できる6社の比率を比べると、次の差がありました。

(交換留学経験者 → 慶應全体、比率の差)
・EYストラテジー&コンサル:17人/397人(4.28%) → 198人/16,291人(1.22%)、3.52倍
・PwCコンサルティング:12人/397人(3.02%) → 166人/16,291人(1.02%)、2.97倍
・アクセンチュア:12人/397人(3.02%) → 287人/16,291人(1.76%)、1.72倍
・デロイト トーマツ コンサル:9人/397人(2.27%) → 186人/16,291人(1.14%)、1.99倍
・東京海上日動:8人/397人(2.02%) → 181人/16,291人(1.11%)、1.81倍
・三井住友銀行:7人/397人(1.76%) → 178人/16,291人(1.09%)、1.61倍
人数は2022〜2024年度の合計。割合と比率差は小数点以下を丸めています。
6社すべてで交換留学経験者の比率が高く、とくにEYとPwCは約3倍以上です。少なくともこの集団では、コンサルティング企業などへの就職と交換留学経験に関連が見られます。
ただし、「交換留学をしたから比率が上がった」とは言えません。応募する時点で、語学力、成績、行動力、国際志向、企業選びの志向が違う可能性があるからです。
倍率は効果の大きさではなく観察された差として読んでください。
個人的には、「交換留学に行けばコンサルに入れる」ではなく「交換留学に行く人は、こうした進路も選んでいる」と読むのが自然だと思っています。
5. 就職先の広がり
就職先は一部の有名企業に集中しているわけではありません。最多のEYでも17人で、正規雇用397人の4.3%です。上位10社を合計しても99人、24.9%にとどまります。
- 2人以上が就職した企業・組織:58先、計253人
- 1人が就職した国内企業・組織:133先、計133人
- 国外就職:9人
- フリーランス:1人
- 起業:1人
コンサルや商社だけでなくメーカー、IT、金融、広告、教育などにも意外と分かれています。
データから見えるのは「決まった正解」ではなく選択肢の幅です。
6. このデータの限界
このデータだけではわからないこともあります。数字を判断の材料にするなら、次の6つの限界に気をつけてください。
- 因果関係:交換留学をしなかった同じ条件の学生との比較ではない
- 応募・内定率:各社に何人が応募し、何人が内定したかは不明
- 学部構成:交換留学経験者と慶應全体の学部・研究科の構成を調整できない
- 仕事内容:職種、配属、英語を使う頻度、海外勤務の有無は不明
- 長期的なキャリア:転職や海外赴任など、入社後の進路は追っていない。国外就職の9人も卒業・修了直後に届け出た進路で、入社後に海外案件や海外赴任に進んだ人数はわからない
- ほかの大学:学生層、協定校、学部構成、就職支援が違うので、そのまま当てはめられない
今回の分析は「交換留学経験者にどんな就職の事例があり、慶應全体とどんな差が見えるか」を確かめるものです。
交換留学の投資対効果や、内定の確率を直接測ったものではありません。
7. 結論:交換留学と新卒就活
慶應の事例から言える答えは「強くなりうるが、交換留学という肩書だけで強くなるわけではない」です。
交換留学では前提の違う相手との協働、第二言語での授業、情報の少ない環境での判断など、仕事につながる経験を得やすくなります。
ただ、採用で評価されるのは、その場で何を考え、どう動き、何を変えたかです。
慶應義塾大学も、帰国の時期によっては一般的な採用選考のピークを過ぎることがあるとして、出発前からの情報収集や業界研究を勧めています。
留学中・帰国後のオンライン選考や留学経験者向けのイベントもありますが、準備なしで有利になるわけではないんです。
8. 就活に生かす4つの準備
a. 出発前:就活時期の逆算
帰国予定の月と卒業予定の時期を並べて、インターン、本選考、OB・OG訪問の時期を確認してください。
志望業界が決まっていなくても、締切が早い企業群だけは押さえておくと動きやすいです。
b. 留学中:行動の記録
正直、「英語を頑張った」だけでは差が伝わりません。
課題、取った行動、相手の反応、結果を週に1回メモしておくと、面接で使える具体例が残ります。人数、期間、点数などの数字も添えておくと伝わりやすいです。
c. 仕事の言葉への言い換え
多国籍チームで意見をまとめた経験なら、「英語力」に加えて、利害の整理、合意づくり、進行管理として話せます。
企業が知りたい力につながって初めて、交換留学は評価の材料になります。
d. 留学経験者の仕事の確認
企業名だけで「海外で働ける」と判断せず、職種、配属、海外案件への関わり方をOB・OG訪問で確認してください。
今回のデータにない部分を個別の情報収集で埋めるイメージです。
個人的には、この記事の数字を見たあとこそ、実際に働いている先輩に1人会っておくのがおすすめです。
まとめ
- 慶應の交換留学経験者552人はコンサル、金融、商社、航空を含む幅広い就職先に進んでいた
- 比較できた6社では、慶應全体より1.61〜3.52倍高い就職比率が見られた
- ただし因果効果は示せない。強みになるかは、経験を行動と能力の言葉にして志望先の仕事につなげられるかで決まる
今日やることは自分の大学の国際センターのサイトで、交換留学生の進路一覧が公開されているか探してみることです。
参考にしたサイト:慶應義塾大学「海外留学と就職活動」 / 慶應義塾大学「2024年度 派遣交換留学生 卒業後進路一覧」 / 慶應義塾大学「就職・進路データ」 / 2022年度 就職者数上位企業 / 2023年度 就職者数上位企業 / 2024年度 就職者数上位企業 / 慶應義塾大学「留学予定・経験のある方へ」
最終確認:2026年9月6日。公表値の合計・割合は筆者が再計算し、小数点以下を丸めています。
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