住友商事の企業研究|事業構造・海外展開・人材育成・働き方を有価証券報告書から読み解く【就活企業研究2026】

住友商事の企業研究

【大学間交換留学の教科書編集部】

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就職活動の進め方をまだつかめていない場合は、先に【必読】就活前のQAを超短縮したまとめを読んでほしい。就職活動の基本を押さえたうえで本稿を読むと、企業研究の要点を理解しやすい。

要旨

本稿は、住友商事の2026年3月期の有価証券報告書と、それを加工した公開データをもとに、同社の事業構造、海外展開の規模、海外勤務につながる人材育成の制度、働き方と処遇、経営陣と株主構成を整理し、就職活動で同社を検討する学生が確認すべき点を示すものである。

主な結果は3点に要約できる。第一に、収益に占める海外の割合は61.3%であり、5大商社の中で最も高い。一方で、工場や建物などの固定的な資産(非流動資産)の過半は日本にある。第二に、同社は年次や属性によらず職務と成果で処遇する人事制度をとり、海外へのトレイニー派遣や事業会社への出向を営業グループごとに行っている。執行役員44人のうち8人は海外の地域組織を率いており、海外の地域組織長も次世代の経営人材の選抜に関わる。第三に、本体の平均年間給与は1,840万円で、本体の社員の約3分の1が他社に出向している。

目次

  1. 本稿の目的と方法
  2. 会社の概要
  3. 海外展開の規模
  4. 人材育成と海外勤務の制度
  5. 働き方と処遇
  6. 経営陣と株主
  7. 総合評価
  8. 就職活動への示唆
  9. 本稿の限界

1 本稿の目的と方法

1.1 目的

就職活動における企業研究では、会社説明会や採用サイトの情報が中心になりやすい。これらは会社の魅力を伝えるために作られた資料であり、他社と同じ基準で比べることが難しい。本稿は、すべての上場企業が同じ様式で作成する公的な開示書類を用いて、住友商事を他社と比較できる形で整理することを目的とする。

本シリーズでは特に、「その会社に入社したとき、海外で働く機会はどの程度あり、どのような形をとるのか」という問いを中心に置く。交換留学を経験した学生や、海外に関わる仕事を志望する学生にとって、この点は会社選びの重要な判断材料になるからである。

1.2 資料

本稿が主に用いる資料は、有価証券報告書(以下、有報)である。有報は、上場企業が事業年度ごとに金融庁へ提出することを法律で義務づけられた書類であり、事業の内容、業績、従業員の状況、役員の経歴、大株主、人材の育成方針などが決まった様式で記載される。金融庁の電子開示システムであるEDINETで、誰でも無料で閲覧できる。

有報には監査法人の監査を受けた財務諸表が含まれ、虚偽の記載には罰則がある。そのため、記載された数値の信頼性は高い。一方で、有報は投資家に向けた書類であり、個々の社員の配属先や駐在の時期といった情報は含まれない。本稿で示すのは、海外で働く機会の「規模と仕組み」であり、個人のキャリアを予測するものではない。

このほか、10年分の業績と大量保有報告書の情報は、有報などをもとにIRBANKが整理したデータを用いた。同業他社との比較には、時価総額3,000億円以上の上場企業約500社の有報から当サイトが集計したデータ(2026年版)を用いた。なお、住友商事の地域別の収益と役員の人数は、当サイトの集計に取りこぼしがあったため、有報の原文で数え直した値を用いている。

1.3 用語の定義

本稿で繰り返し用いる用語を、先に定義しておく。

連結と単体 「単体」は住友商事という会社そのもの、「連結」は住友商事が支配する子会社を含めたグループ全体を指す。就職活動で「住友商事に入社する」という場合、雇用契約を結ぶのは単体の住友商事である。

収益と当期利益 収益は、商品やサービスを売って得た金額の合計である。当期利益(本稿では親会社の所有者に帰属する当期利益を指し、以下「純利益」とする)は、そこから費用や税金を差し引いて最終的に残った利益である。総合商社は取引の規模が大きいため収益が巨額になりやすく、会社の稼ぐ力を見るには純利益の方が適している。

非流動資産 1年を超えて使い続ける資産のことで、工場、鉱山の権益、建物などがこれにあたる。有報では、このうち金融資産などを除いたものが地域別に開示される。収益が「どこで売ったか」を表すのに対し、非流動資産は「どこに事業の土台を持っているか」を表す。

関係会社 子会社と、出資して経営に影響を与えている関連会社をまとめた呼び方である。有報の「関係会社の状況」には、このうち主要な会社が所在地とともに記載される。

出向 会社に在籍したまま、子会社や取引先など別の会社で働くことである。総合商社では、出資先の事業会社に出向して経営や実務を担うことが多い。

パーセンタイル 集団の中での位置を0から100で表した数値である。たとえば「80パーセンタイル」は、比較した500社の中で下から80%の位置、つまり上位20%に入ることを意味する。

2 会社の概要

2.1 総合商社という事業

住友商事は、総合商社と呼ばれる業態の会社である。総合商社の事業は大きく2つに分けられる。1つは、メーカーと買い手の間に入って商品を売買するトレーディングである。もう1つは、事業会社に出資し、その経営に関わることで利益を得る事業投資である。

かつての総合商社はトレーディングが中心であったが、現在は事業投資の比重が大きい。そのため、社員の仕事には、取引の交渉だけでなく、出資先の会社に出向して経営を担うことも含まれる。この点は、後に見る海外勤務の形を理解するうえで重要である。

2.2 9つの事業セグメント

住友商事は、戦略ごとにまとめた「SBU(Strategic Business Unit)」を基本単位とし、これを9つの営業グループに束ねて運営している。鉄鋼、自動車、輸送機・建機、都市総合開発、メディア・デジタル、ライフスタイル、資源、化学品・エレクトロニクス・農業、エネルギートランスフォーメーションである。同社は営業利益をセグメント別に開示していないため、図1ではセグメント別の収益と純利益を示した。

住友商事のセグメント別の収益と純利益
図1 セグメント別の収益と純利益(2026年3月期、単位:十億円)

収益が最も大きいのは鉄鋼の1兆4,542億円で、全体の約2割を占める。一方、純利益が最も大きいのはエネルギートランスフォーメーションの1,024億円であり、輸送機・建機の889億円、資源の823億円、都市総合開発の815億円が続く。純利益が800億円前後のグループが4つ並んでおり、特定の事業に利益が偏っていないことが同社の特徴である。ライフスタイルは36億円の損失であった。

人員の規模はグループによって大きく異なる。連結の従業員数は、メディア・デジタルが21,583人、ライフスタイルが16,885人であるのに対し、資源は867人にすぎない。メディア・デジタルにはITサービスのSCSK、ライフスタイルには食品スーパーのサミットなど、多くの従業員を抱える国内の事業会社が含まれる。どの営業グループに配属されるかによって、扱う商材だけでなく、組織の規模や海外との関わり方が大きく異なると考えられる。

なお、同社は2026年4月1日付で、メディア・デジタルグループの名称をコミュニケーションサービスグループに変え、全社組織にあったDX・ITグループを営業グループの「デジタル・AIグループ」に改めた。次の有報ではセグメントの区分が変わる可能性がある。

2.3 業績の推移

2026年3月期の収益は7兆3,373億円、純利益は6,003億円であった。図2は、過去10年の純利益の推移である。

住友商事の純利益の推移(10年)
図2 純利益の推移(2017年3月期〜2026年3月期、単位:十億円)

10年前の2017年3月期の純利益は1,709億円であり、2026年3月期はその約3.5倍にあたる。2026年3月期は、この10年で最も大きい純利益であった。一方、2021年3月期には1,531億円の損失を計上しており、10年の間に赤字の年を経験している。2024年3月期にも3,864億円へ減少した後、2期続けて増加した。

海外駐在には、住居費や各種手当など、国内勤務より大きな費用がかかる。利益の水準が高まっていることは、海外への派遣を続ける財務的な基盤が強まっていることを意味する。一方で、資源などの事業で大きな損失が出る年もあることは、志望者も理解しておくべきである。

3 海外展開の規模

3.1 地域別の収益と資産

住友商事の2026年3月期の収益を地域別に見ると、日本が39%、米国が19%、欧州・CISが13%、アジア大洋州が11%、その他米州が9%、中東・アフリカと東アジアがそれぞれ5%であった(図3)。日本以外を合計した海外の比率は61.3%であり、前年度の64.6%からはやや低下した。

住友商事の地域別の収益の構成
図3 地域別の収益の構成(2026年3月期)

他の大手商社と比べると、伊藤忠商事の23.4%、丸紅の49.2%、三井物産の49.4%、三菱商事の52.7%を上回り、5大商社の中で最も高い。5大商社以外では、双日が55.4%、豊田通商が72.0%である。また、米州、欧州・CIS、アジア大洋州、中東・アフリカ、東アジアのいずれの地域にも一定の収益があり、特定の国に偏らない分布であることも特徴である。

一方、非流動資産の分布は異なる姿を示す。2026年3月期の非流動資産2兆4,465億円のうち、日本にあるのは1兆3,624億円で、全体の55.7%を占める。海外では米国の5,114億円が最も大きい。収益の6割を海外で上げながら、工場や建物などの資産の過半は日本にあることになる。ただし、この数値には出資先の株式などの金融資産が含まれないため、海外の事業への投資の大きさをそのまま表すものではない。国内では、食品スーパーやITサービスなど設備や店舗を多く持つ事業会社を連結していることが影響していると考えられる。

3.2 海外拠点の分布

有報の「関係会社の状況」に記載された主要な海外子会社・関連会社は、32か国に96社あった。国別に見ると、米国が17社で最も多く、英国と中国がそれぞれ8社、マレーシア、オーストラリア、ブラジルがそれぞれ5社で続く(図4)。

住友商事の主要な海外子会社・関連会社の国別件数
図4 主要な海外子会社・関連会社の国別件数(2026年3月期)

32か国という数は、比較した約500社の中で最も多い水準にある。上位の国に加えて、アラブ首長国連邦、イスラエル、南アフリカ、クウェートなど、中東やアフリカの国にも関係会社がある。関係会社の一覧には主要な会社しか記載されないため、実際に社員が勤務する国はこれより多いと考えられる。

3.3 海外比率の解釈

地域別の収益は、売上を計上した会社の所在地で分けた数値である。したがって、社員が実際に働いている場所の分布を直接表すものではない。それでも、住友商事の収益が米州、欧州、アジア、中東・アフリカに広く分布していることは、同社の海外での事業が多くの地域にまたがっていることを示している。

同社の海外の事業は、米州、欧州、アジア大洋州、中東・アフリカ、東アジアの5つの地域組織を軸に運営されている(6.1節)。海外で働く機会は、こうした地域組織での業務や、各地域の事業会社への出向という形をとることが多いと解釈できる。

4 人材育成と海外勤務の制度

有報には「人的資本」と呼ばれる、人材への投資や育成方針を記載する欄がある。住友商事はこの欄で「グローバル人材マネジメントポリシー」を掲げ、目指す個人の姿を「Top Tier Professionalism」(グループの理念に共感し、高い志を持ち、自律的な成長を続け、グローバルフィールドで新たな価値創造に挑戦する人財)と定めている。伊藤忠商事が開示する「入社8年目までの海外派遣比率」のような、海外経験の時期を示す数値目標はない。その代わりに、職務と成果で処遇する制度と、選抜した人材を計画的に動かす仕組みが具体的に記載されている。本節では、その内容を4つの観点から整理する。

住友商事の海外勤務に関わる4つの数字

4.1 職務と成果で処遇する人事制度

同社の報酬制度は「Pay for Job, Pay for Performance」という考え方に基づく。基本給には職務と役割の大きさを、賞与には個人・組織・会社全体の成果を反映させる。管理職では年次による管理をやめ、職務の大きさで等級を決める職務等級制度を導入している。最上位の等級では、年収の約30%が会社の業績に連動する。

また、同社はかつて採用時に2つの職掌(総合職にあたるものと、転居を伴う転勤のない事務職掌)を分けていたが、2022年にこれを一本化した。管理職には、組織を率いる「マネジメント職群」と、専門性でプロジェクトを牽引する「エキスパート職群」の2つのキャリアパスが用意されている。

この制度は、入社年次によって昇進の時期や担当する仕事が決まるのではなく、担う職務の大きさで処遇が決まることを意味する。海外の重要なポストに若いうちから就く可能性がある一方で、その機会は自動的に与えられるものではないと考えられる。

4.2 現場経験としての海外派遣と出向

同社は、全社共通の研修に加えて、営業グループごとに独自の研修を行い、海外へのトレイニー派遣(研修生としての海外派遣)や事業会社への出向による現場経験を含めた人材育成を行っている。海外経験の機会は全社一律の制度ではなく、各営業グループのビジネスに合わせて設計されていると読み取れる。

出向の規模は従業員の状況から確認できる。2026年3月末時点で、本体の従業員4,938人のうち1,639人が他社に出向していた。約3分の1の社員が、子会社や出資先などの別の会社で働いていることになる。出向先には海外の事業会社も含まれると考えられ、同社の社員にとって、本社の外で事業会社の経営や実務を担うことはキャリアの一般的な一部であると解釈できる。

4.3 次世代の経営人材の選抜と配置

同社は、社長、各グループのCEO、海外を含む地域組織の長によるタレントレビュー(人材の評価と育成方針の検討)を行い、次世代の経営人材の候補を選んでいる。候補者には、グループをまたぐ異動、業界の異なる組織での経験、より大きな役割への挑戦といった「戦略的配置転換」を3年以内に行うことを目標としている。2026年3月期にこの配置転換を受けた候補者の割合は24.5%であり、経営人材育成プログラムの参加者は23名であった。

さらに、同社は世界共通で職務の大きさを比較できる「Job Grading」の導入と、人財データベースの構築を進めている。日本の本社の社員と海外の拠点で採用された社員を、同じ基準で評価し配置するための仕組みである。同社は、こうした人材育成の取り組みを日本だけでなく海外の地域組織にも広げていくとしている。

4.4 社内公募と多様な人材

社員が自らキャリアを選ぶ仕組みとして、同社は社内公募制を拡大している。2026年3月期の成約件数は35件(前年度は38件)であった。また、管理職に占めるキャリア採用者の比率は14.6%であった。

同社は、キャリア採用者の視点、海外の拠点で採用された社員、女性のリーダーなど、多様な人材が案件づくりや意思決定に関わる状態を「知のミックス」と呼び、組織力の源泉と位置づけている。日本から海外に赴任する社員も、海外で採用された社員と一緒に事業を進めることが前提になっていると考えられる。

5 働き方と処遇

5.1 給与・年齢・勤続年数

2026年3月期の住友商事本体の平均年間給与は1,840万円(前年度比5.5%増)、平均年齢は43.3歳、平均勤続年数は18年3か月であった。図5は、卸売業の各社と平均年齢・平均年間給与を比較したものである。

卸売業各社の平均年齢と平均年間給与(住友商事)
図5 卸売業各社の平均年齢と平均年間給与(2026年3月期)

平均年間給与は、比較した卸売業22社の中で4位であった。三菱商事の2,113万円、三井物産の2,059万円、伊藤忠商事の1,991万円に次ぎ、丸紅の1,784万円を上回る。卸売業の中央値1,105.5万円の約1.7倍にあたる。ただし、有報の平均年間給与は職種を問わない全社員の平均であり、職種や年次による差は反映されていない。嘱託を除いた従業員の平均年間給与は1,891万円である。

5.2 労働時間と定着

住友商事の有報には、月平均の残業時間、有給休暇の取得率、離職率の数値は記載されていない。働き方に関する制度としては、テレワーク制度と、コアタイム(必ず勤務すべき時間帯)のないスーパーフレックス制度を設けている。国内外の地域組織を含めて行う社員の意識調査では、社員エンゲージメント指数が71%、社員を活かす環境指数が72%であった。

男性の育児休業取得率は79.6%である。一方、女性管理職比率は11.2%(2026年3月末時点)であり、同社は2030年度までに20%以上とすることを目標にしている。部長級に限ると女性の比率は2.6%にとどまる。男女の賃金の差異は、男性の賃金を100としたときの女性の賃金が63.1であった。同社はその主な要因として、女性社員の多くがかつての事務職掌に属していたため女性の管理職が少ないことを挙げている。

5.3 組織の構造:本社1人あたりのグループ社員数

住友商事の連結従業員数は82,488人、単体の従業員数は4,938人である。連結を単体で割った値は16.7となり、本社の社員1人に対してグループ全体で約17人の社員がいる計算になる。本稿ではこの値を「本社レバレッジ」と呼ぶ。

同じ計算を他の5大商社に当てはめると、伊藤忠商事は27.8、三菱商事は14.1、丸紅は12.5、三井物産は10.4であった。住友商事は5社の中で2番目に高い。4.2節で見た出向者の多さと合わせると、少ない本社の社員が多くのグループ会社の経営に関わる構造であることが分かる。

6 経営陣と株主

6.1 経営陣の経歴

2026年6月12日時点で、住友商事の社内出身の取締役は7人であった。有報に記載された略歴は「常務執行役員」「専務執行役員」といった役職の変化が中心で、担当した地域や拠点はほとんど記載されていない。そのため、略歴から海外勤務の経験を読み取ることはできない。ただし、2026年6月の株主総会で新たに常勤の監査等委員となった役員は、2018年から米州総支配人補佐、米州住友商事会社の副社長兼CFOを務めた経歴を持つ。

執行役員に目を向けると、海外の役職の重みが分かる。2026年6月12日時点の執行役員44人のうち8人が、海外の地域組織を率いる役職に就いていた。このうち5人は、アジア大洋州、米州、東アジア、欧州、中東・アフリカの各地域を統括する総支配人または総代表であり、残りはアフリカ支配人、インドネシア住友商事会社の社長、米州住友商事グループのエネルギー事業の責任者である。経営幹部の約2割が海外の地域組織を率いていることになり、4.3節で見たとおり、こうした地域組織の長は次世代の経営人材の選抜にも関わっている。

6.2 株主構成

住友商事の株式のうち、外国法人等が保有する割合(外国人持株比率)は39.3%である。図6は、上位10位までの大株主を種類別に合計したものである。

住友商事の大株主の種類別の保有割合
図6 上位10位の大株主の種類別の保有割合(2026年3月期)

上位には、投資信託や年金の資産を管理する国内の信託銀行の口座が並び、合計で21.2%を占める。次いでState Street Bank and Trust Company(9.78%)など海外の機関投資家の口座が合計17.3%を占める。また、IRBANKが整理した大量保有報告書の情報によれば、米国のバークシャー・ハサウェイ傘下のNational Indemnity Companyの保有割合は、前回の9.29%から10.30%に増えたと報告されている(2026年5月12日提出)。大量保有報告書は、株式の5%超を保有した投資家が提出する書類である。同社は2026年5月に、主要株主である筆頭株主の異動を公表している。

株主の約4割が海外の投資家であり、世界的に知られた投資家が10%を超える株式を持つことは、同社の経営が国際的な基準で評価され続けることを意味する。社員にとっても、事業の収益性を数値で説明することが日常的に求められる環境であると考えられる。

7 総合評価

7.1 5つの指標による位置づけ

本シリーズでは、海外で働く機会に関わる5つの指標を用いて、約500社の中での各社の位置を示している(指標の定義は付録を参照)。図7は、住友商事の各指標のパーセンタイルである。

住友商事の海外キャリアに関わる5つの指標
図7 海外キャリアに関わる5つの指標(約500社の中でのパーセンタイル)

住友商事は、海外子会社がある国の数が100であり、比較した約500社の中で最も多い水準にある。海外勤務・研修に関する記述は84、本社レバレッジは73、海外売上比率は69、現地化に関する記述は65であった。5つの指標を重みづけして合計した総合指数では、上位10%にあたるTier Sに分類された。

なお、1.2節で述べたとおり、当サイトの集計では住友商事の地域別の収益のうち米州の2行を取りこぼしており、海外売上比率を46.5%としていた。本稿の図7は、原文の61.3%に直して他社と比べ直した値である(他社の順位は再計算していない)。

7.2 4類型による位置づけ

本シリーズでは、海外売上比率の大小と、有報に記載された海外勤務・現地化の記述の傾向から、会社を4つの類型に分けている(図8)。

海外キャリアの4類型と住友商事の位置
図8 海外キャリアの4類型と住友商事の位置

住友商事は、海外売上比率が50%以上であり、日本から人を送ることに関する記述が現地化に関する記述より多いことから、このシリーズの分け方では「日本人派遣型」に分類される。ただし、この分類は記述の数にもとづく目安である。4.3節と4.4節で見たとおり、同社は世界共通の職務等級や海外採用社員の活用も進めており、日本からの派遣と現地人材の登用を並行して進めている会社であると考えられる。

8 就職活動への示唆

8.1 面接・OB訪問で確かめるべき点

以上の分析から、有報だけでは分からず、社員に直接確かめる価値がある点が3つ導かれる。

  1. 海外へのトレイニー派遣は営業グループごとに設計されているが、配属先のグループによって、若手が海外に出る時期や形はどの程度違うか(4.2節)
  2. 職務等級制度のもとで、若手社員が海外の地域組織や事業会社の重要なポストに就くのは、どのような経験を積んだ後か(4.1節、4.3節)
  3. 在籍者の約3分の1が他社に出向しているが、若手のうちに海外の事業会社に出向する例はどの程度あるか(4.2節、5.3節)

質問の際には、根拠となる情報を添えるとよい。たとえば「有価証券報告書で、営業グループごとに海外へのトレイニー派遣を行っていると拝見しました」と前置きすれば、企業研究をしたうえでの質問であることが伝わる。また、回答が「部署による」であった場合は、相手自身の経験を尋ねることで、具体的な情報を得やすくなる。

OB・OG訪問の相手を見つける方法は、交換留学前にOB・OG訪問をする理由|ビズリーチ・キャンパスの使い方と注意点で詳しく解説している。

8.2 交換留学の経験との接点

住友商事は、目指す人材の姿として「自律的な成長を続け、グローバルフィールドで新たな価値創造に挑戦する」ことを掲げ、社員一人ひとりの「WILL(意欲)」を起点にキャリアを切り開く仕組みを整えている。交換留学は、自分で留学先を選び、慣れない環境で学習や生活を組み立てる経験であり、この「自律」の考え方と重なる部分が大きい。

ただし、海外で暮らした経験そのものは、志望者の間で差がつきにくい。評価されやすいのは、自分で目標を立て、周囲を巻き込んで成果を出した経験であると考えられる。たとえば、留学先で履修したい授業の受講枠が足りなかった際に、担当教員と交渉して受講を認めてもらい、同じ立場の留学生にも手続きを共有した経験は、自ら機会をつくる姿勢として説明できる。また、同社の収益は欧州・CIS、中東・アフリカなど幅広い地域に分布しているため、欧州や中東に留学した学生は、その地域での経験を同社の事業と結びつけて話すこともできる。

9 本稿の限界

本稿の分析には、次の5つの限界がある。

  1. 平均値の限界:有報の平均年間給与や平均年齢は全社員の平均であり、職種や年次別の分布は分からない。
  2. 地域別の数値の限界:地域別の収益は売上を計上した会社の所在地による区分であり、社員が働く場所の分布を直接表すものではない。非流動資産も、資産の所在地を表すにすぎない。
  3. 拠点数の限界:関係会社の一覧には主要な会社のみが記載されるため、実際の拠点数や勤務地はこれより多い。
  4. 役員の経歴の限界:住友商事の有報の役員の略歴は役職の変化が中心であり、海外勤務の経験はほとんど読み取れない。
  5. 時点の限界:本稿の数値は2026年3月期の有報に基づく。営業グループの組織は2026年4月に変わっており、制度や指標も年度ごとに変わりうるため、最新の有報で確認する必要がある。

まとめ

まとめると、住友商事は次のような特徴を持つ会社である。

  • 収益の61.3%を海外で上げ、5大商社の中で最も高い。収益は米州、欧州、アジア、中東・アフリカに広く分布している
  • 職務と成果で処遇する制度をとり、海外へのトレイニー派遣や事業会社への出向を営業グループごとに行い、執行役員44人のうち8人が海外の地域組織を率いている
  • 平均年間給与は1,840万円で、在籍者の約3分の1が他社に出向している

最初の一歩として、EDINETで住友商事の有価証券報告書を開き、「サステナビリティに関する考え方及び取組」の中の「人的資本に関する開示」を読んでほしい。本稿の第4節で整理した制度と指標の多くが、そこにまとめて記載されている。


付録 指標の定義:海外売上比率は、地域別の収益のうち日本以外の割合。海外子会社がある国の数は、「関係会社の状況」に記載された主要な海外子会社・関連会社の所在国の数。本社レバレッジは、連結従業員数を単体従業員数で割った値。海外勤務・研修に関する記述は、有報本文における海外勤務・派遣・研修に関する記述の件数に、社内出身の役員のうち海外勤務経験のある人数を加えたもの。現地化に関する記述は、外国人管理職や現地人材の登用に関する記述の件数。いずれも時価総額3,000億円以上の上場企業約500社の中でのパーセンタイルで示した。総合指数は5指標を30%・25%・10%・25%・10%の重みで合計し、上位10%をTier S、30%までをTier A、60%までをTier B、それ以外をTier Cとした。4類型は、海外売上比率50%を境に、海外勤務に関する記述と現地化に関する記述のどちらが多いかで分けた。

データの出典:住友商事 有価証券報告書(第158期、2025年4月1日〜2026年3月31日)。10年分の業績と大量保有報告書の情報は IRBANK による(出典:金融庁EDINET、加工:IRBANK)。同業他社との比較と5つの指標は、各社の有価証券報告書をもとに当サイトが集計した。

最終確認日:2026年10月26日