今、世界の家賃がやばい

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【大学間交換留学の教科書編集部】

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留学先の寮費や部屋の家賃を調べて、「思っていたより高い」と驚いたことはありませんか。
実際、世界の家賃はこの数年でかなり上がりました。
そして日本から行く学生には、現地の家賃の上昇に円安が重なっています。
私は、世界の家賃の高さは「どこも同じように高い」のではなく、国や都市、借り方でまったく違うと思っています。
だから、高いからとあきらめる前に、行き先と住まいの選び方で負担を下げられる余地を探してみてください。

この記事ではOECDの家賃指数と為替のデータをPythonで計算し、円で払う人から見た家賃の上がり方を出しました。

1. 世界の家賃の上がり方

まず、現地のお金で見た家賃の動きです。
OECDの家賃指数で、コロナ前の2019年を100とすると、2025年はアイルランドが134、カナダが130、イギリスが127、オランダが119、ドイツが111でした。
アメリカは2024年までの値で127です。
6年で3割前後上がった国が並んでいます。

家賃の推移(2019年=100、現地のお金で見た値)

一方で、日本は101とほぼ横ばいでした。
2025年も、イギリスは5.4%、オランダは5.1%、カナダは4.9%上がっていて、日本は0.5%です。
世界全体で見ても、国連人間居住計画(UN-Habitat)の2026年の報告は、住宅は2億6,880万戸以上足りず、借りている人の44%が払いきれない水準の家賃を払っているとしています。
正直、日本で暮らしていると、この差はなかなか実感できません。

2. 円で払う人の負担

日本の学生にとっては、ここに円安が重なります。
1ドルは2019年の約109円から2024年の約151円に、1ユーロは約122円から約164円になりました。
そこで、2019年から2024年までの家賃の上昇率を、現地のお金と円の両方で計算しました。

家賃はコロナ前(2019年)から2024年までに何%上がったか

円で見ると、アメリカは76%、アイルランドは72%、イギリスは68%、カナダは67%上がっています。
現地のお金ではそれほど上がっていないドイツ、スペイン、フランスも、円では43〜46%の上昇です。
日本以外の12か国すべてで、円安による上がり幅のほうが、現地の家賃そのものの上がり幅より大きくなりました。
たとえば2019年に月10万円だった部屋は、2024年にはアメリカなら約17.6万円、ドイツなら約14.6万円にあたります。

国をそろえて比べられる最新の年が2024年なので、計算はそこまでにしています。
2025年は1ユーロが約169円とさらに円安が進んだので、ヨーロッパの部屋は円で見るとさらに高くなっています。

3. 統計に出ない新規契約の家賃

上の家賃指数には、もう1つ注意があります。
物価統計の家賃はすでに住んでいる人も含めた家賃の平均です。
これから部屋を借りる人が払う家賃は、もっと上がっていることがよくあります。

カナダの住宅公社(CMHC)によると、2024年のトロントでは、空いている部屋と入居中の部屋(どちらも2ベッドルーム)の家賃の差が44%ありました。
オーストラリアの研究でも、シドニーの募集家賃は借りている人全体の家賃の中央値より29.3%高いとされています。
日本も同じで、統計の家賃は横ばいなのに、アットホームの調べでは東京23区の30㎡以下のマンションの募集家賃が2026年2月に11万0177円となり、前年より12.0%上がりました。

交換留学生はいつも「これから新しく借りる人」です。
しかも半年や1年の短い契約なので、統計の数字より高い家賃を見ることになりやすく、数年前の体験記の金額で見積もると現地で足りなくなるおそれがあります。
今の募集の金額で見るのがおすすめです。

4. 家賃が上がる4つの理由

家賃が上がる理由は国ごとに違いますが、大きく分けると次の4つです。

a. 住宅が足りない

いちばん大きいのは、住みたい人に対して住宅が足りないことです。
UN-Habitatの報告では、住宅価格の年収倍率は世界全体で2010年の9.3から2023年の11.2に上がりました。
ただ、同じ報告は建てる量を増やすだけでは手ごろな家賃にはならないとも書いています。

b. 家を買えない人が借りる側に残る

家の値段や金利が上がると、買えない人が借り続けます。
アメリカのハーバード大学の住宅研究センター(JCHS)は、持ち家の費用が高いことで借りる世帯が増え、2025年4〜6月には集合住宅の借家世帯の増え方が過去最多だったと報告しています。
東京でも、2026年度上半期の首都圏の新築マンションの平均価格は1億1494万円となり、建築費の高騰が押し上げたと報じられました。

c. 人の流入

人が急に増える都市では、家賃も上がりやすくなります。
カナダでは、学生や就労の許可を持つ一時滞在者が2024年10月の約315万人から2026年1月の約268万人に減りました。
同じ時期に募集家賃は下がり始め、2026年1月までで16か月続けて前年を下回っています。
ただし、留学生の影響を小さく見る研究もあります。
オーストラリアで留学生の上限が家賃に与える影響を試算した研究では、下がる幅は平均0.8%ほどでした。
留学生だけを家賃高騰の原因にする見方には、私は慎重でいたいと思っています。

d. 住宅が住まい以外に使われる

観光客向けの短期賃貸が増えると、住むための部屋が減ります。
EUでは2026年5月から、短期賃貸の物件の登録とデータの提供を求める規則が始まりました。
欧州委員会は9月に、住宅の負担が重い地域だとデータで示せば、自治体が短期賃貸を制限できる法案を出しています。
一方でAirbnbは、対策は建設や空き家の活用など、住宅を増やすほうに向けるべきだと反論しています。

5. 各国の対策と論争

各国の対策は家賃を抑える、借りる人を守る、人の流入を絞る、の3つに分かれます。
どれにも賛成と反対があります。

a. 家賃を抑える

ニューヨーク市では2026年6月、家賃規制のある約100万戸について、家賃の引き上げを0%にする「凍結」が決まりました。
マムダニ市長の公約で、10月以降の契約更新から適用されます。
借り手の側は歓迎しましたが、不動産業界の団体は、建物の運営費が1年で5.3%上がっているのに委員会は自らのデータを無視したと批判しています。

スペインのバルセロナでは、2024年から新しい契約の家賃に上限があります。
2026年1〜3月の新規契約の家賃は、制度が始まった2024年1〜3月より市内で4.71%低く、上限のない地域では9.53%高くなりました。
市長は制度が効果を上げていると話しています。
ただ、経済学には反対の結果もあります。
サンフランシスコを調べた研究(2019年)では、家賃規制の対象になった家主が賃貸住宅を15%減らし、長い目で見ると市場の家賃を押し上げた可能性が高いとされました。

スペイン全体では、87歳の女性の立ち退きをきっかけに抗議が広がりました。
政府の対策は10月2日に議会で否決され、首相は総選挙の前倒しを表明しました。
政府は10月6日に、緊急の住宅対策を改めて決めています。
政府によると、スペインで借りている人の26%は収入の平均40%を家賃と光熱費に使っていて、EU平均の18%を大きく上回ります。

b. 借りる人を守る

イギリス(イングランド)では2026年5月1日から借家人権利法が始まりました。
理由のない立ち退きは廃止され、家賃の引き上げは年1回まで、借り手どうしで家賃をせり上げさせることも禁止です。
前払いの家賃も1か月分までになりました。
ただし、5月1日以降に契約する学生専用の寮(PBSA)は、この法律の対象外です。
イギリスに行く人は、寮と民間で守られ方が違うことを知っておくと安心です。

c. 人の流入を絞る

カナダは2024年1月から、学生の許可の数に上限を設けました。
その後、家賃は下がり、2026年1月の募集家賃はバンクーバーで9.2%、トロントで4.6%前年を下回っています。
オーストラリアは2026年の留学生の受け入れを29万5,000人とし、公立大学は学生向けの住居を増やしたと示せれば留学生を増やせる仕組みにしました。

6. 交換留学生への影響

ここまでを交換留学生の目線でまとめると、影響は次の3つです。

1つ目は行き先によって負担が大きく違うことです。
カナダのように家賃が下がり始めた国もあれば、アイルランドのように上がり続けている国もあります。
円で見ても、2019年からの上昇はアメリカの76%からフランスの43%まで差があります。

2つ目は大学の寮に入れるかどうかで差が開くことです。
オランダでは2026年9月時点で学生の部屋が約2万200戸足りず、民間の学生の部屋の平均家賃は2025年1〜3月に683ユーロでした。
2025年の平均レートで計算すると、月11万円を超えます。
寮に申し込めるなら、まず寮に申し込むのが、家賃の高騰に対していちばん確かな備えだと私は思っています。
申し込みの順番や結果待ちの間の動き方は、交換留学の住居はいつ探す?で説明しています。

3つ目は部屋が足りない都市ほど詐欺が増えることです。
相手や物件を確かめられないまま保証金を送ってしまう失敗は、焦っているときに起きやすいです。
支払う前の確認の仕方も上の住居の記事にまとめています。

7. 留学費用の見積もり方

家賃が上がっている今、留学費用を見積もるときは次の3つを押さえておくと安心です。

1つ目は住居費を今の円で計算することです。
寮費や家賃を、受入大学の公式ページにある今年度の金額で調べ、今のレートで円に直します。
個人的には、為替が動いても困らないよう、少し円安のレートで計算しておくのがおすすめです。

2つ目は民間の部屋なら今の募集家賃で見ることです。
3章で見たように、統計の家賃や数年前の体験記の金額は、これから借りる人の家賃より低く出がちです。

3つ目は現地のお金で払うときの手数料まで見ることです。
家賃が上がっているぶん、両替や送金の手数料も積み重なります。
私はヨーロッパの留学先に学期の費用を払うとき、Wiseで送金しました。
大学や寮への送金の手順はWiseで大学・学生寮へ送金する方法にまとめています。
Wiseで送金の手数料を確かめる

都市ごとの住居費と総額の考え方は、次の記事で計算しています。

まとめ

  • 世界の家賃は2019年から3割前後上がった国が多く、欧米では円で払うと4割台から7割台の上昇になる
  • 統計の家賃より、これから借りる人の募集家賃のほうが高く、交換留学生はいつもこちらを払う
  • 家賃が下がり始めた国もあり、行き先と寮に入れるかどうかで負担は大きく変わる

今日やることは、候補の受入大学の寮費を公式ページで調べて、今のレートで円に直してみることです。


参考にしたサイト:OECD「Analytical house price indicators」(家賃指数)、Eurostat「ert_bil_eur_a」(為替の年平均)、UN-Habitat「World Cities Report 2026」第3章、Harvard JCHS「America’s Rental Housing 2026」、ダイヤモンド不動産研究所(アットホームの2026年2月の募集家賃)、アットホーム「募集家賃動向(2026年9月)」、熊本日日新聞(共同通信)首都圏の新築マンション価格、Advisor.ca(CMHCの2024年の家賃の差)、ANU「Rental Trends Paper」、Asian Pacific Post(カナダの一時滞在者)、Moving2Canada(Rentals.ca 2026年2月の報告)、BUILA(カナダの学生の許可の上限)、IEAA(豪州の2026年の受け入れ上限)、Property Council of Australia、Real Estate Business(留学生の上限と家賃の試算)、Travel Extra(EUの短期賃貸の規則)、Oman Observer(Airbnbの反論)、NY1(ニューヨークの家賃凍結)、amNY(不動産業界の批判)、Catalan News(バルセロナの新規契約の家賃)、Diamond, McQuade, Qian(2019)American Economic Review、Al Jazeera(スペインの政令の否決)、Ahram Online(AP、スペインの借家人の負担)、ClickOnDetroit(AP、スペインの緊急対策)、GOV.UK Housing Hub(借家人権利法)、North Tyneside Council(借家人権利法)、Pararius(オランダの学生の部屋の不足)、IamExpat(Kamernetの部屋の平均家賃)

グラフと円換算の上昇率は、OECDの家賃指数(2015年=100、年次)とEurostatのユーロ参照レートの年平均をもとに、編集部がPythonで計算したものです。家賃指数は各国の物価統計の家賃で、入居中の人を含む平均です。数字は2026年10月31日に確認しました。体験談は筆者個人のもので、同じ結果を保証するものではありません。